ブロッキング(天気)(読み)ぶろっきんぐ(英語表記)blocking

翻訳|blocking

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブロッキング(天気)」の意味・わかりやすい解説

ブロッキング(天気)
ぶろっきんぐ
blocking

天気図解析や天気予報上の用語。中緯度帯では移動性の高気圧低気圧の運動は、北向きまたは南向きの進行成分をもちながらも、おおむね西から東に向かうのが通常の状態である。これは、これらの気圧系を形成、維持する「仕組み」(主として偏西風波動)が、偏西風の流れの中を東進するためである。ところが、ときおり、広い範囲にわたって、数日間またはそれ以上も、高気圧や低気圧の東向きの運動が停滞したり、逆行したりすることがある。この現象ブロッキングという。英語のブロックには妨害阻止、行動妨害(スポーツで)などの意味があり、前記のような高気圧や低気圧の正常な進行が妨げられる現象にも、このことばが用いられていて、気象用語になった。ブロッキングがおきているときは、上空の偏西風波動は著しく振幅を増して大きく南北に蛇行し、典型的な場合には北側に切離高気圧、南側に切離低気圧が形成されている。このときにできる停滞性の背の高い高気圧をブロッキング高気圧という。梅雨期などに現れる停滞性のオホーツク(海)高気圧はブロッキング高気圧のことが多い。ブロッキングは偏西風波動の不安定化という、大気大循環一つの型式であり、これにより高緯度低緯度の間で大気が熱とともに大きく交換される。これがおこると広範囲に寒波熱波干魃(かんばつ)、長雨などの異常天候が現れやすい。

[倉嶋 厚]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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