ブレーメン(読み)ぶれーめん(英語表記)Bremen

精選版 日本国語大辞典 「ブレーメン」の意味・読み・例文・類語

ブレーメン

(Bremen) ドイツ北西部、ウェーザー川下流の大河港都市。八世紀に司教座が設置されたのに始まる。バルト海貿易の基地として発展し、一一八六年に都市自治権を得た。一三五八年ハンザ同盟加盟、一六四六年自由ハンザ都市となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブレーメン」の意味・わかりやすい解説

ブレーメン
ぶれーめん
Bremen

ドイツ北西部の都市。ハンブルクに次ぐ同国第二の港湾都市で、ウェーザー川下流部沿岸を占める。人口53万9400(2000)。約60キロメートル離れたウェーザー川河口の外港ブレマーハーフェンとともにブレーメン州を構成し、その州都でもある。同州は面積404平方キロメートル、人口66万0200(2000)。ドイツ最小の州である。ウェーザー川北東岸の砂丘上に、舟運、商業、宗教上の中心都市として発達し、市街地は周辺の微高地対岸に拡大した。ウェーザー川沿いの内陸と外洋を結ぶ要地にして同川の渡河点にあたり、今日もライン、ルール地方とハンブルクを結ぶ主要な鉄道・道路がここを通る。南方ハノーバーを経てフランクフルト方面への連絡もよい。

 ブレーメン経済の中心は貿易で、タバコ綿花などの農産物を輸入し、石炭、肥料、スクラップなどを輸出する。ドイツの大郵船会社北ドイツ・ロイド社は、1857年にここに設立された。工業では、貿易と関連する造船、機械、たばこ、食品のほか、繊維、自動車、金属加工などが重要である。州の行政機関、連邦郵政海運などの機関があり、文化施設も整っている。第二次世界大戦の戦災で中世の妻入の市民家屋や公共建造物が破壊されたが、マルクト(市場)広場の周りの司教座教会聖ペトリ大聖堂(12世紀創建)、ルネサンス様式の市庁舎(1405~09)、ギルド館(16世紀)、市の守護神の中世騎士ローラントの像(1404)などは再建された。マルクト広場の入口にグリム童話『ブレーメンの音楽隊』の像がある。

[齋藤光格]

歴史

市の歴史は、787年の司教座設置に始まる。845年大司教座に昇格し、スカンジナビアへのキリスト教布教の拠点となり、また888年市場開設特許状が皇帝より賦与された。1186年皇帝フリードリヒ1世によって都市自治が認められ、市民が大司教の都市支配から完全に脱したのは13世紀のことである。1358年ハンザ同盟に加入し、その有力な一員としてイングランド、ネーデルラントなどと貿易したが、内部的にはいわゆるギルド闘争に苦しみ、富裕市民の寡頭支配がかろうじて維持された。宗教改革では、最終的にはカルバン派が制し、1646年帝国自由都市となり、1815年ウィーン条約によって自由都市としての地位が内外に確認された。1827年外港ブレマーハーフェンを建設し、ハンブルクに次ぐドイツ第二の商港となった。

[瀬原義生]

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改訂新版 世界大百科事典 「ブレーメン」の意味・わかりやすい解説

ブレーメン
Bremen

ドイツ北西部の都市。約65km下流の外港ブレーマーハーフェンとともにブレーメン州をなす。人口66万3200(2004)。ウェーザー川に沿い,ハンブルクに次ぐ同国第2の港湾都市。羊毛,木綿,タバコ,穀物などが輸入され,市内外にはこれらの原料を加工する産業が栄え,またウェーザー川下流では造船業が盛ん。旧市街は,第2次世界大戦中に甚大な被害を受けたものの,復興によって旧時の姿を今日によく伝える。17世紀初期に完成した北方ルネサンス様式の市庁舎も復元され,その前にはブレーメンの象徴である石造のローラント像(1405ころ)が立ち,市庁舎のかたわらには名高い〈ブレーメンの音楽隊〉の彫刻が置かれている。大聖堂をはじめとして由緒ある建物も多い。同じ北ドイツのハンブルク,リューベックなどと同様,建造物は主として煉瓦造りで,北ドイツで最も景観の美しい都市の一つに数えられる。フランク王国時代の787年に司教座が置かれ,北方伝道の拠点となったことがブレーメンの起源であり,ハンブルクにすでに置かれていた大司教座もやがてブレーメンに移された。この間商業中心地としても栄え,10世紀にはドイツ皇帝から商業に対する保護特権が与えられた。それ以降は,宗教都市としてよりも貿易の基地,商業都市として成長し,12世紀末以後,商人団体の存在が確認される。こうした商人層の台頭とともに大司教支配は漸次後退し,しだいに商人層が独立的に政策を遂行するようになった。その頂点に立ったのは商人中とくに有力な少数門閥であり,商人貴族の勢力はハンブルクに比べて安定していた。ハンザ同盟加盟都市の中でもハンブルクをもしのぐ格式をもって遇された。しかしハンザに対する連帯意識はさほど強固ではなく,ハンザから分離する傾向を示した時期もあった。宗教改革時代に急速に新教化し,ハンザ全体が衰亡した三十年戦争中,リューベック,ハンブルクとともに三市同盟を結び安全保障を図った。この三市同盟は結局はハンザに代わるものとして近代まで存続し,他の2都市とともにブレーメンが今日もなお〈ハンザ自由都市〉という称号を有するのはこのためである。19世紀以降アメリカ大陸との貿易が盛行を見,ブレーメンはこの世界貿易によって港湾都市として著しく地位を高めた。ナポレオン時代フランス領に編入されて一時繁栄が足踏みをしたものの,解放後再び発展し,多くの有力な企業が設立されてドイツ経済の発達に貢献した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブレーメン」の意味・わかりやすい解説

ブレーメン
Bremen

ドイツ北西部,ウェーザー川河口から約 65kmに位置する河港都市。正式名称は自由ハンザ都市ブレーメン Freie Hansestadt Bremen。ハンブルクに次ぐドイツ第2の貿易港をもつ。 787年カルル大帝が司教座を設けたのに始まる。 845年ハンブルク教区がノルマンの侵入で破壊されてから,これを統合して大司教座となり,ヨーロッパ北部のキリスト教伝道基地として栄えた。商業も興り,北ヨーロッパ,イングランドとの貿易港として勢力を得て,965年には都市権を獲得,大司教 A.アダルベルト (1043~72) のもとで最初の繁栄を謳歌した。 13世紀司教の支配を脱し,1358年ハンザ同盟に入り,商業都市として発達。 1646年帝国直轄都市となり,1815年には自由ハンザ都市としてドイツ連邦に加盟した。現在はブレーマーハーフェンとともに独自の州を形成している。商業のほか,工業も盛んで,造船,製鉄,機械,航空機,電機,食品などの各種工業が立地。市街はウェーザー川右岸の旧市街と 17世紀以降発達した左岸の新市街からなる。戦争で市街の約6割が被災したが,マルクト広場の華麗な市庁舎 (15~17世紀) とローラント像 (1404) ,11世紀の聖ペトリ大聖堂 (ロマネスク・ゴシック様式) ,シュッティング (1537~94。商業会議所) などが残っている。市庁舎とローラント像は 2004年世界遺産の文化遺産に登録。人口 54万7685(2010)。

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百科事典マイペディア 「ブレーメン」の意味・わかりやすい解説

ブレーメン

正式名は自由ハンザ都市ブレーメンFreie Hansestadt Bremen。ドイツ北部,ウェーザー川河口から約70kmにある河港都市。ブレーマーハーフェンとあわせてブレーメン州を構成。ハンブルクに次ぐ貿易港。機械,自動車,製油,化学,タバコ,食品加工などの工業が行われる。教育大学,商船学校がある。788年司教座がおかれ,中世にはハンザ同盟の有力都市の一つとして活躍。1646年帝国自由都市。第2次大戦中Uボートの基地となり,市街の60%が破壊された。54万6451人(2012)。
→関連項目自由都市ブレーメンのマルクト広場の市庁舎とローラント像

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ブレーメン」の解説

ブレーメン
Bremen

ドイツ西北部,ヴェーザー川下流の港湾,商業都市。外港ブレーマーハーフェンとともに一連邦州ブレーメンを構成。787年司教区ブレーメン設置。その後商業都市として発展,13世紀以後ハンザ同盟の有力メンバーであった。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ブレーメン」の解説

ブレーメン
Bremen

ドイツ北部,ヴェーザー川の下流域にある港湾都市
8世紀に司教座が置かれ,しだいにバルト海貿易の基地として発展した。1186年皇帝特許状を得,13世紀にはハンザ同盟の有力な都市として栄えた。第二次世界大戦中,潜水艦基地であったため,市街の約6割が破壊された。現在,造船・自動車工業などが盛ん。

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世界大百科事典(旧版)内のブレーメンの言及

【ウェーザー[川]】より

…上流部フルダ川に注ぐエダー川には高さ45mのエダー・ダムがあり,長さ27kmに及ぶ貯水池は早春の高水時に水を集めヘッセン州に電力を供給するほか,水量の少ない夏にもウェーザー川の航行をカッセルまで可能にした。また,ブレーメンより下流部では水深が大で,大洋航行船舶が往来し,水上交通路として重要である。支流のフンテ川,アラー川なども舟運に利用される。…

【ブレーマーハーフェン】より

…ドイツ北西部,ブレーメン州の海港都市。ウェーザー川の河口右岸に位置。…

※「ブレーメン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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