ブルネル(英語表記)Marc Isambard Brunel

改訂新版 世界大百科事典 「ブルネル」の意味・わかりやすい解説

ブルネル
Marc Isambard Brunel
生没年:1769-1849

フランスで生まれ,イギリスで活躍した技術者。1793年フランス革命のためにアメリカへ亡命し,ニューヨークで技術者として活躍した。99年にイギリスへ渡り,1806年に船舶用木製滑車の大量生産用機械を作ったが,この機械は従来100人以上の人間を要した生産工程を,10人でもできるようにしたものであり,イギリスにおける大量生産工法の先駆けとなった。18年にトンネル用シールド工法特許を取り,22年に高圧蒸気に適する傾斜直動機関の特許も得た。シールド工法は滞水層中の掘削を可能とするトンネル工法における画期的な発明であり,同工法により,25年にテムズ川底トンネルの建設が開始された。この工事には彼の一人息子で造船・土木技術者として活躍したIsambard Kingdom Brunel(1806-59)も設計に参加した。テムズ川底トンネル工事は数度にわたる湧水や経済的な行詰りのために数年間中断されたものの,42年に完成,43年に供用が開始された。彼はそれまでの技術的貢献により,1841年にナイトに叙せられた。なお,息子のI.K.ブルネルはグレート・ブリテン号グレート・イースタン号の設計者として知られる。
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百科事典マイペディア 「ブルネル」の意味・わかりやすい解説

ブルネル

英国の土木・造船技術者。父はシールド工法の発明者で,またテムズ川の河底トンネルの建設でも有名なM.I.ブルネル〔1769-1849〕。父の事務所で働き,クリフトン橋,ハンガーフォード橋などを設計。ロンドン〜ブリストル間の鉄道の技師長として,狭軌から広軌に変える大工事を遂行。またグレート・ウェスタン号(世界最初の大西洋定期汽船,1320トン,1838年),グレート・ブリテン号グレート・イースタン号などを建造した。

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世界大百科事典(旧版)内のブルネルの言及

【シールド工法】より

…湧水を防ぐために,圧縮空気を送り込むことにより(圧気シールドという),軟弱悪質な地盤や帯水地盤での掘削に威力を発揮する。1818年イギリスのM.I.ブルネルによって考案され,25年,ロンドンのテムズ河底トンネルに使用されたのが最初である。当初用いられたものは断面が長方形(高さ6.5m,幅10.8m)で,その後,円形に改良されたが圧気を併用しなかったため,出水で工事は難航し,トンネルが完成したのは43年であった。…

【水底トンネル】より

…現代の開削埋戻し工法である。近代になってからはロンドンのテムズ川が発祥の地で,M.I.ブルネルの開発した原始的なシールド(高さ6.5m,幅10.8mの長方形,無圧気)を用い,20年余りの歳月をかけて,1843年に水底部延長460mの河底トンネルが完成した。次いで70年には同じくテムズ川の河底に最初の圧気シールドによる地下道〈Tower Subway〉が作られている。…

※「ブルネル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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