ブルカノ島(読み)ぶるかのとう(英語表記)Vulcano

改訂新版 世界大百科事典 「ブルカノ島」の意味・わかりやすい解説

ブルカノ[島]
Vulcano

イタリア南端,ティレニア海リパリ諸島に属する島。7km×3.5kmの楕円形で,人口約450人。夏季には,ヨーロッパ各国からバカンス客が多数訪れる。島の北部に直径3kmの馬蹄形凹地が北へ開き,その中央に底面直径2km,標高390mのブルカノ火山(別名グラン・クラテーレGran Cratere)がある。頂上には直径約500m,深さ約100mの火口がある。その溶岩はSiO258~60%,含カンラン石玄武岩質安山岩あるいは粗面岩である。

 その噴火活動は前5世紀以来知られている。前186年に,島の北端海上に底面直径1300m,標高123mのブルカネッロVulcanello火山が生じ,その後の噴火によりブルカノ島に接続された。ローマ神話で,この火山は〈火の神〉ウルカヌスVulcanus(ギリシア神話ヘファイストス)の鍛冶場のあった所とされた。前43年の噴火の後,1444年まで噴火の記録はないが,その後は,100年に1回くらいの頻度で噴火している。1771年噴火では溶岩流を出している。1886-90年の噴火は特に激しく,この型の噴火をブルカノ式噴火と称するようになった。すなわち,比較的長期間活動を休止していて,火口が閉塞されている火山で,マグマが活発化して,分離したガス圧力が増大して,火口栓が飛ばされ,火山弾火山岩塊火山灰などが爆発的に放出されるような噴火である。噴出物の放出初速度はしばしば音速を超える。安山岩質マグマ(中程度の粘性)の火山に特徴的な噴火様式であり,日本の浅間山桜島などがしばしばこの型の噴火をする。なお,ブルカノ火山の現在の活動は,火口内の噴気だけである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブルカノ島」の意味・わかりやすい解説

ブルカノ島
ぶるかのとう
Vulcano

ヨーロッパの地中海中部、ティレニア海にあるイタリア領リパリ諸島南端の火山島。安山岩、流紋岩などからなり、長径(北西南東)約8キロメートル、面積21平方キロメートル余。シチリア島のメッシーナ県リパリ村に属する。複合成層火山で、南半部は古い火山(499メートル)だが、北半部のブルカノ火山(390メートル、別名グラン・クラテーレGran Cratere)は紀元前5世紀から1890年までしきりに爆発型噴火を反復していたが、その後は山頂付近で噴気活動がみられるだけである。北端の半島状小丘ブルカネッロ(123メートル)は前183年の海底噴火で誕生し、その後の2噴火で本島に接続した。この両火山間の入り江の海底からは、硫化水素、炭酸ガスなどが活発にわき出しており、観光名所でもある。孤立型の激烈な火山爆発を「ブルカノ式噴火」とよぶのはこの島にちなむ。また、火山のことをボルケーノvolcano(英語)、ブルカンVulkan(ドイツ語)などとよぶのはこの火山名に由来する。古代人はこの火山を火と技術の神ブルカン(ギリシア神話の主神ゼウスの子)の溶鉱炉と考えた。島は地味(ちみ)に貧しく、アメリカなどへの移民が盛んであった。シチリア島のミラッツォからリパリ諸島巡りの連絡船がある。夏季にはヨーロッパ各国からのバカンス客でにぎわう。

[諏訪 彰]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブルカノ島」の意味・わかりやすい解説

ブルカノ島
ブルカノとう
Isola Vulcano

イタリア南西部,シチリア島北東方,チレニア海に浮ぶエオリエ諸島の活火山島。シチリア州メッシナ県に属する。ブルカノ火山 (386m) があり,ストロンボリ島の火山とともにたびたび噴火した。最後の大噴火は 1888~90年。噴火口の麓のポルトレバンテが中心集落。軽石,硫黄などを産する。面積 21km2。人口約 450。

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