ブリヤート語(読み)ぶりやーとご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブリヤート語」の意味・わかりやすい解説

ブリヤート語
ぶりやーとご

モンゴル系の言語の一つ。おもにロシア連邦ブリヤーチア共和国に居住するブリヤート・モンゴル人の使用する言語で、内モンゴル(内蒙古(もうこ))の一部でも話されている。使用人口は30万人を超すと推定される。

 モンゴル系の言語のなかでは、北部方言として分類され、さまざまな音韻的特徴をもっている。たとえば、標準的なハルハ語tsの音に対し、ブリヤート語ではsの音が、ハルハ語のtʃに対しʃが、またハルハ語のsに対しhが現れるなどのごとくで、以下のような例があげられる。ハルハ語tsagaan「白い」:ブリヤート語sagaan「白い」、ハルハ語tʃada-「できる」:ブリヤート語ʃada-「できる」、ハルハ語usa(ŋ)「水」:ブリヤート語uhaŋ「水」。

 現在は、1939年に制定されたキリル文字に基づくブリヤート・モンゴル文字が用いられているが、この文字によって書かれる文章語はブリヤート語ホリ方言に基づいている。

[小沢重男]

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改訂新版 世界大百科事典 「ブリヤート語」の意味・わかりやすい解説

ブリヤート語 (ブリヤートご)
Buryat

モンゴル系の言語の一つで,おもにロシア連邦のブリヤート共和国で使用されるほか,内モンゴルの一部でも用いられる。ブリヤート・モンゴル語ともよばれる。モンゴル諸語の中で,北部方言に属し,その使用人口は30万人以上にのぼると推定される。ブリヤート語は,ハルハ語のtsに対してsが,tʃに対してʃが,さらにsに対してhが現れるなどの音韻的特徴をもつ言語である。例,ハルハ語tsagaan〈白い〉:ブリヤート語sagaan,ハルハ語tʃada-〈できる〉:ブリヤート語ʃada-,ハルハ語usa(n)〈水〉:ブリヤート語uhan。1939年にロシア文字による新しいブリヤート・モンゴル文字を制定し,現在にいたっているが,この文字による文章語は,ブリヤート人一般に理解されやすいホリ方言に基づく。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブリヤート語」の意味・わかりやすい解説

ブリヤート語
ブリヤートご
Buryat language

モンゴル語の1つ。バイカル湖付近に住むブリヤート族の言語で,ロシアのブリヤート共和国を中心に約 35万人の話し手をもつ。方言的には西ブリヤート方言と東ブリヤート方言に大別される。中心は東のホリ方言。 1931年にそれまでのモンゴル文字からローマ字に替えたが,その後 38年からロシア文字を使用。

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世界大百科事典(旧版)内のブリヤート語の言及

【モンゴル諸語】より

…また,同じくロシア連邦のブリヤート共和国で話されるブリヤート・モンゴル語(ブリヤート方言。しばしばブリヤート語とも)は音韻,文法面で,他の方言と異なる特徴をもつが,大きくは東部方言に属させることができよう。ハルハ・モンゴル語は,比較的,方言的差異が少ないが,内モンゴルの言葉は方言的差異が少なくなく,上記のチャハル方言のほかに,ハラチン方言,ホルチン方言,バルガ方言,ウラト方言,オルドス方言などいくつかの方言を取り出すことができる。…

※「ブリヤート語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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