ブラフマー(読み)ぶらふまー(英語表記)Brahmā

精選版 日本国語大辞典 「ブラフマー」の意味・読み・例文・類語

ブラフマー

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デジタル大辞泉 「ブラフマー」の意味・読み・例文・類語

ブラフマー(〈梵〉Brahmā)

ヒンズー教で、シバビシュヌ神とともに三神の一。宇宙創造神仏教にとりいれられ、梵天ぼんてんとなった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラフマー」の意味・わかりやすい解説

ブラフマー
ぶらふまー
Brahmā

ヒンドゥー教創造神。「梵天(ぼんてん)」と漢訳される。ウパニシャッド思想の最高原理である「ブラフマン」(中性形)を神格化したもの。ブラフマーはブラフマンの男性形。ブラフマンからの宇宙創造説が有力になるにしたがって、抽象的な観念になじまぬ人々は、この中性原理を人格神に変える必要を感じたものであろう。かくてブラフマーは造物主(プラジャーパティ)とみなされ、初期仏教経典が成立したころには、世界の主宰神、創造神と一般に認められるようになっていた。しかし、シバとビシュヌの信仰が高まるにつれて、ブラフマーの地位は下がり、両神のうちのいずれかの影響のもとに宇宙を創造すると考えられるようになり、両神のような幅広い信仰の対象となることはなかった。ブラフマーは、水上で眠るビシュヌの臍(へそ)から生えた蓮花(れんげ)から生まれるとされる。また、スバヤンブ(自存者)、ピターマハ祖父)ともよばれる。

上村勝彦

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ブラフマー」の解説

ブラフマー
Brahmā

インドの神。ウパニシャッド哲学の最高原理ブラフマンの神格化で,最高神として仰がれ,シヴァヴィシュヌとともにヒンドゥー教の三主神とされた。観念的で神話が乏しいため,人々の信仰を得られず,これを祭る寺院は多くなかった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブラフマー」の意味・わかりやすい解説

ブラフマー
Brahmā

インド神話の神。最高原理であるブラフマンを人格神とみなしたもの。中世にビシュヌ,シバとの三神一体思想が興ると,世界を創造支配する最高の神とされた。後世次第にビシュヌ,シバほど信仰されなくなり,今日ブラフマーのみを信仰する宗派は存在しない。仏教にも取入れられ,梵天となった。

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改訂新版 世界大百科事典 「ブラフマー」の意味・わかりやすい解説

ブラフマー
Brahmā

梵天(ぼんてん)

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世界大百科事典(旧版)内のブラフマーの言及

【インド】より

…その崇拝の対象は多種多様であり,強大な勢力をもつ神々から山川草木に至るまでが対象となる。ベーダ聖典において有力であった神々は退き,ブラフマー(梵天),ビシュヌ,シバの三大神格を中心に展開したが,ブラフマーは中世以降多くの信者を得ることができなかった。しかしビシュヌはラクシュミーを神妃として化身(アバターラavatāra)の理論によってクリシュナ信仰やラーマ信仰や仏教をも包摂した。…

【インド神話】より

…これがいわゆるヒンドゥー教の神話である。ヒンドゥー教の主神はブラフマー(梵天)とシバ(大自在天)とビシュヌ(毘瑟笯,毘紐)である。ブラフマーはウパニシャッド哲学の最高原理ブラフマン(中性原理)を神格化したもので,宇宙創造神,万物の祖父(ピターマハ)として尊敬されるが,他の2神のように幅広い信仰の対象となることはなかった。…

【海】より

…インドの神話によれば,世界のはじめには,茫漠たる大洋の上で宇宙の維持者である大神ビシュヌが,一頭の巨大な蛇を寝台にして長い冥想の眠りに耽っている。時が熟するとこの神の臍から蓮が生え出て花を開き,その中に創造神ブラフマーが誕生することによって,世界の創造が開始される。古代エジプトの神話では原初には大洋ヌンだけが存在したが,そのただ中に太陽神ラーが,まずピラミッドの形をした丘の形で出現した。…

【解脱】より

…すなわち,人は死んで火葬に付されたのち,いったん全員月世界に赴く。そのうち,前生で善をなし,正しい知識をもって正しく祭祀を遂行した人びとは,月世界を離れ,ブラフマー(梵天)の世界に達し,二度と再びこの世に戻ってこない。この経路を〈神道(しんどう)(デーバ・ヤーナdeva‐yāna)〉という。…

【三神一体】より

…ヒンドゥー教の教理のひとつで,ブラフマー神(梵天)とビシュヌ神とシバ神は,実は同一神,ないし宇宙の最高原理の別名にほかならないということを意味する。大叙事詩《マハーバーラタ》の補遺としての性格をもつ《ハリ・バンシャ》に,すでに,ビシュヌ神とシバ神は同一であるとの見方が説かれているが,プラーナ文献にいたって,ブラフマー神を加えた三神が同一であることが表明されるようになった。…

【卵】より

…さらにエジプト神話では,ナイル川のガチョウが産んだ黄金の卵から太陽神ラーが誕生し,創造神クヌムKhnumも口から卵を吐きだしこれを言語の源としたと語られている。同様にヒンドゥー神話にも黄金の卵から創造神ブラフマー(梵天)が生まれ,二つに割れた殻が天と地に変じたという話がある。これらの神話は非生物的な卵から生物が生まれる創造の奇跡に由来すると考えられ,混沌から秩序への移行を象徴する。…

【髑髏】より

…人のどくろから狂犬病の薬がつくれるとプリニウスは言う(《博物誌》第28巻)。またヒンドゥー教では,ブラフマーが暴風雨神ルドラすなわちシバをつくってこれをカパーリー(〈どくろを持つ者〉の意)と呼び,世界を守護するよう依頼した。シバがこの呼び名に立腹して左母指の爪でブラフマーの首を切ったところ,そのどくろがシバの手について12年間離れなかった(《バラーハ・プラーナ》。…

【ビシュヌ】より

…これは,太陽が東の地平から出て,中天に達し,再び西の地平に没することを歌ったと考えられる。このベーダの太陽神は,ヒンドゥー教において,ブラフマー(梵天),シバとならぶ三大神の一つとなり,ブラフマーが宇宙を創造し,ビシュヌが維持し,シバが破壊するとされた。シバが山岳と関係あるのに対し,ビシュヌは海洋と縁が深い。…

【プシュカラ[湖]】より

…ポーカルPokharとも呼ばれる。プシュカラは〈青蓮華〉のことで,ヒンドゥー教徒はこの地を創造神ブラフマー(梵天)の聖地としている。ブラフマー神はかつて蓮華を手にしてこの地を訪れ,そこで神々を破滅させようと苦行をしていた悪魔バジュラナーバを発見した。…

【梵天】より

…ヒンドゥー教の主神の一つ。サンスクリットのブラフマーBrahmāの音訳。ウパニシャッド思想の最高原理ブラフマン(梵,中性)を神格化したもので,ブラフマーはその男性主格形である。…

※「ブラフマー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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