日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ブラウン(Gordon Brown)
ぶらうん
Gordon Brown
(1951― )
イギリスの政治家。イギリス北部スコットランドの牧師の家に生まれた。「経済学の父」アダム・スミスの故郷で、リノリウム製造が盛んだった鉱工業都市カーコルディで青少年期を過ごし、エジンバラ大学に入学、歴史学を専攻。入学直前、ラグビー中のけがが原因で網膜剥離(はくり)となり、左目の視力を失ったが、優秀な成績で卒業、後に博士号も取得した。1976年からエジンバラ大学などで講師を務め、1980年にはスコットランド・テレビの記者となった。
サッチャー保守党政権時代の1983年に、労働党から下院議員に初当選。当初はサッチャー政権の国有企業民営化に反対するなど伝統的左派イデオロギーの信奉者だったが、やがて現実主義路線に転換。1997年に、旧来の左翼でもなく、新自由主義でもない「第三の道」を掲げるブレア労働党政権が成立すると、財務相となり、イングランド銀行に金利決定権をゆだねる自由主義的な政策を発表した。イギリス近代史上において、財務相の在任期間は最長を誇る。2007年6月ブレア首相の退任に伴い首相に就任。2008年の経済・金融危機以来、経済・雇用状況が低迷、また財政赤字の削減が進展しないなかで行われた2010年5月の総選挙で大敗し、第一党の座を保守党に明け渡し退陣。
[宮明 敬]