ブタクサ(英語表記)bitterweed
hogweed
Ambrosia artemisiifolia L.var.elatior(L.) Descurtilz

改訂新版 世界大百科事典 「ブタクサ」の意味・わかりやすい解説

ブタクサ
bitterweed
hogweed
Ambrosia artemisiifolia L.var.elatior(L.) Descurtilz

北アメリカ原産のキク科一年草。草は高さ1.5mに達する。葉は茎の下部では対生し,上部では互生する。葉身は薄くてやわらかく,細かく2~3回分裂する。花期は7~10月。花は単性頭花で,雌雄同株。雄頭花は枝の先に細長い総状につき,径3~4mm。風媒花である。総苞片は合生し,中に12~16個の筒状花がある。一般にキク科植物では葯が互いにくっついているが,本種の葯はほとんど離れている。雌頭花は雄花序の下の葉腋ようえき)に2~3個つく。総苞片は合生し,中に花冠のない雌花が1個ある。瘦果(そうか)は硬化した総苞につつまれて偽果となる。1877年ころ日本に帰化し,広く都市の荒地入り込み,その分布域は日本全土におよぶ。花粉球形で,風によって運ばれるため,空気とともにこの花粉を人が吸い込むとアレルギー性の鼻炎,結膜炎気管支喘息(ぜんそく)などの花粉症を起こす。和名は英名hogweedの訳語

 同じく北アメリカ原産の帰化植物であるクワモドキA.trifida L.は茎が高さ3mに達し別名オオブタクサという。ブタクサ同様花粉症をひき起こす。葉はすべて対生し,葉身は掌状に3~5中裂する。花期は8~9月。花は単性の頭花で,雌雄同株,雌・雄の頭花などのようすはブタクサと同じである。中国東北部へは古く1920年代に入っていたようであるが,日本へは50年前後に帰化したらしい。河岸や市街地に多く,一度入ると2~3年で大群落をつくり,ブタクサと異なり消失しにくい。
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百科事典マイペディア 「ブタクサ」の意味・わかりやすい解説

ブタクサ

キク科の一年草。北米原産の帰化植物で各地の路傍などにはえる。茎は高さ30〜100cm。葉は2〜3回羽状に裂ける。雌雄同株。8〜9月,小さな黄色の頭花を開く。雄花は茎頂に長い穂状につき,雌花は雄花穂の下部に腋生するが少数で目立たない。果実には毛がない。第2次大戦後急速に分布を拡大した。風媒花で,開花期に花粉症の被害を起こす。近縁種により大型のオオブタクサ(クワモドキとも)があり,同じく北米原産。各地の河原などにときに大群落をつくる。
→関連項目帰化植物クワモドキ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブタクサ」の意味・わかりやすい解説

ブタクサ
ぶたくさ / 豚草
[学] Ambrosia artemisiifolia L. var. elatior (L.) Desc.

キク科(APG分類:キク科)の一年草。茎は直立し、高さ0.5~1.5メートル。葉は茎の下部では対生し、上部では互生する。葉身は2、3回羽裂し、裂片は線形、質は薄くて柔らかい。雌雄同株。7~10月、雄性頭花は枝先に長い穂状につき、雌性頭花はその下部の葉腋(ようえき)に2、3個つく。花期に球形の花粉を多量に風によって飛ばすが、これはアレルギー性の鼻炎、結膜炎、気管支喘息(ぜんそく)など、花粉症の原因となる。北アメリカ原産の帰化植物で、明治初期に渡来し、全国の空き地や河川敷などに生えている。名は、英語の通称名hogweedの訳からついた。

[小山博滋 2022年4月19日]


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