フリードマン(英語表記)Freedman, Michael Hartley

精選版 日本国語大辞典 「フリードマン」の意味・読み・例文・類語

フリードマン

(Milton Friedman ミルトン━) アメリカの経済学者。優れた貨幣理論を樹立した自由主義経済学者で、一九七六年ノーベル経済学賞を受賞。著「アメリカ合衆国貨幣史」など。一九一二年生まれ。

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デジタル大辞泉 「フリードマン」の意味・読み・例文・類語

フリードマン(Milton Friedman)

[1912~2006]米国の経済学者。独自の貨幣観・金融政策観に基づく新貨幣数量説の体系を確立。その主張はマネタリズムとよばれた。1976年ノーベル経済学賞受賞。著「消費の経済理論」「資本主義と自由」など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フリードマン」の意味・わかりやすい解説

フリードマン
Freedman, Michael Hartley

[生]1951.4.21. カリフォルニア,ロサンゼルス
アメリカ合衆国の数学者。1973年,プリンストン大学博士号を取得。1973~75年カリフォルニア大学バークリー校で教鞭をとり,1975~76年プリンストン高等研究所 IASに赴任,1976年カリフォルニア大学サンディエゴ校の教授に就任。1986年にバークリーで開催された国際数学者会議で,4次元ポアンカレ予想の解決によりフィールズ賞を受賞。1998年にマイクロソフトの研究機関マイクロソフトリサーチの招聘を受け,アカデミズムの世界を離れた初のフィールズ賞受賞者となった。20世紀初めにアンリ・ポアンカレはコンパクトで単連結な 3次元多様体は 3次元球面と位相同形であろうという,いわゆるポアンカレ予想を提唱した。一般の次元のポアンカレ予想は,n次元多様体が n次元球面とホモトピー同値(→ホモトピー論)ならば,n次元球面と位相同形であると定式化される。1次元と 2次元についてはすでに 19世紀に,対応する結果は知られていた。n が 5以上のときの高次元ポアンカレ予想は,1960年にスティーブン・スメールによって解決された。しかし 4次元の場合には,高次元で成立する交叉理論を用いることができないという困難が生じ,フリードマンが 1983年に解決した。また,フリードマンの結果とサイモン・ドナルドソンの業績を組み合わせることで,4次元空間には通常の微分構造と異なる構造が存在するという驚くべき結果が得られた。

フリードマン
Friedman, Milton

[生]1912.7.31. ニューヨークブルックリン
[没]2006.11.16. カリフォルニア,サンフランシスコ
アメリカ合衆国の経済学者,教育者。シカゴ大学,コロンビア大学などで学び,第2次世界大戦前はおもに政府関係機関に勤務,1946~83年シカゴ大学で教鞭をとる。中心的研究主題は貨幣分野で,1958年以来,新貨幣数量説の提唱者として知られる。リチャード・M.ニクソン大統領時代のブレーンであったこともあって,貨幣供給量をもって最大の経済政策変数とし,ジョン・メイナード・ケインズの影響下にある財政金融政策 (→ケインズ学派 ) に反対するそのマネタリズムはしだいに影響力を拡大した。経済学方法論や消費関数論,アメリカ貨幣史,自由主義経済論など研究分野は広く,思想的には新自由主義の指導者の一人で,シカゴ学派の中心的存在。諸学会の会員,役員,諸大学の名誉教授を務めた。 1976年ノーベル経済学賞受賞。主著"Essays in Positive Economics" (1953) ,『消費の経済理論』A Theory of the Consumption Function (1957) ,『資本主義と自由』 Capitalism and Freedom (1962) ,"A Monetary History of the United States,1867-1960" (1963,アンナ・シュワルツと共著) ,"The Role of Monetary Policy" (1968) ,『選択の自由』 Free to Choose (1980) ,『政府からの自由』 Bright Promises,Dismal Performance (1983) など多数。

フリードマン
Friedman, Jerome Isaac

[生]1930.3.28. イリノイ,シカゴ
アメリカ合衆国の物理学者。1950年シカゴ大学卒業,1956年同大学で博士号を取得。1957~60年スタンフォード大学で研究,1960年マサチューセッツ工科大学 MIT助教授,1967年同大学教授。この間,スタンフォード線形加速器研究所(→SLAC国立加速器研究所)においてヘンリー・ウェイ・ケンドール,リチャード・E.テーラーとともに原子核の散乱実験に取り組む。1975年,陽子中性子は内部に硬い点状の芯をもっており,これが 1964年に提唱されていた基本粒子クォークであるとの結論に達した。素粒子における相互作用の統一理論にとって不可欠なクォークの存在を確認した業績により,1990年ケンドール,テーラーとノーベル物理学賞を共同受賞。

フリードマン
Friedmann, Georges Philippe

[生]1902.5.13. パリ
[没]1977.11.15.
フランスの社会学者。第2次世界大戦中は対独レジスタンスに参加し,戦後も平和運動に活躍。 1946年から2年間国立工芸学校の教授をつとめ,48年以来ソルボンヌの高等研究学校 École des Hautes Études学務長,49~51年社会学研究センター会長。彼の労働社会学はより包括的に労働をとらえるために,生理的,技術的,心理的,社会的な観点から労働の現実を把捉しようとした。特に労働者の技術的環境の変化が人間疎外をもたらしていくことを強く指摘した。主著『人間労働の未来』 Où va le travail humain? (1950) 。

フリードマン
Friedman, Bruce Jay

[生]1930.4.26. ニューヨーク
アメリカの小説家,劇作家。ミズーリ,コロンビア両大学に学ぶ。いわゆるブラック・ユーモア作家の一人。郊外に住む気弱なユダヤ人を主人公にした『スターン』 Stern (1962) ,ゆがんだ母子関係を喜劇的にとらえた『母親のキス』A Mother's Kisses (64) ,妻を寝取られた男の復讐を西部劇のパロディーとして描いた『刑事 (でか) 』 The Dick (70) などの小説のほか,短編集,戯曲がある。いずれも被害者的立場のユダヤ人を主人公に,それを滑稽かつグロテスクに扱うところに特色がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「フリードマン」の意味・わかりやすい解説

フリードマン
Milton Friedman
生没年:1912-2006

アメリカの経済学者。保守的な考え方をもつ経済学者のなかで,最も代表的な一人として挙げられる。1932年ラトガース大学を卒業,33年シカゴ大学で修士,46年コロンビア大学より博士号を得た。48年から76年までシカゴ大学教授,のちスタンフォード大学フーバー研究所に移る。フリードマンは,経済活動の基礎には貨幣の働きがあり,とくに貨幣供給量の変化によって経済活動全体の動きが大きく左右されるという信念をもち,いわゆるマネタリズムの考え方を提唱した。また市場制度を通じて自由な経済活動が行われるとき,社会的にみて最も望ましい資源配分が実現されるという,古典派経済学の考え方に新しい時代の衣を着せての啓蒙的な面での活躍も著しい。代表的な著作には《消費関数の理論》(1957),《貨幣的安定を求めて》(1959)などがある。76年ノーベル経済学賞受賞。
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百科事典マイペディア 「フリードマン」の意味・わかりやすい解説

フリードマン

アメリカの経済学者。シカゴ大学で教え,ジャーナリズムでも活躍。貨幣供給量の変化によって経済活動全体の動きが左右されるという〈マネタリズム〉の考え方を提唱した。アメリカのレーガン政権やイギリスのサッチャー政権における経済政策に与えた影響は大きい。また主著《消費関数の理論》(1957年)では,消費関数を現在の所得にでなく,生涯所得に関連づけることでケインズ学派の消費関数を解釈し直した。主著に《資本主義と自由》(1962年)がある。1976年ノーベル経済学賞。
→関連項目自然失業率新自由主義

フリードマン

米国の物理学者。1956年シカゴ大学で博士号取得,1967年マサチューセッツ工科大学教授。素粒子のクォークモデルの発展につながる先駆的実験により,1990年H.W.ケンドール,R.E.テーラーとともにノーベル物理学賞。

フリードマン

米国の数学者。4次元多様体,特に4次元ポアンカレ予想の解決により,1986年フィールズ賞

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ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者) 「フリードマン」の解説

フリードマン

ポーランドの作曲家。クラクフで音楽を学んだ後、レシェティツキーに師事してウィーンデビューを果たした。作曲はウィーンでグイード・アドラーに、ライプツィヒでフーゴー・リーマンに師事している。ピアニスト ...続き

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367日誕生日大事典 「フリードマン」の解説

フリードマン

生年月日:1902年5月13日
フランスの社会学者
1977年没

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世界大百科事典(旧版)内のフリードマンの言及

【完全雇用】より

…これらの経済には,上述したような最大の総産出量の存在は必ずしも明らかでなくなる。 E.S.フェルプス,M.フリードマンらのマネタリスト(マネタリズム)と呼ばれる経済学者は,1960年代末,物価上昇と失業率との短期的なトレードオフを認めるとしても,長期的なトレードオフ関係についてはこれを否定している。失業率は長期的には物価水準の変化率がゼロまたは一定となる自然失業率の水準に落ち着き,長期フィリップス曲線は自然率で垂直になる。…

【ケインズ学派】より

… ケインズ学派に特徴的なことは,政府がこうした総需要管理政策を積極的に行うことを主張することである。この点,新古典派経済学(現代ではM.フリードマンらのマネタリズムもこの系譜に属する)が経済の運営を民間部門,あるいは市場機構に任せるべきだとし,政府の介入を嫌うのときわめて対照的である。新古典派が信頼をよせる市場(価格)機構が必ずしもいつも完全に機能するとは限らず,経済は時として総需要の不足に陥ることになるから,そういうときには自由放任主義ではなく政府が積極的な総需要管理政策を行うべきだ,というのがケインズ派の基本的な立場である。…

【恒常所得】より

…第2次大戦後,アメリカの消費需要の予測精度を高めるという目的とS.クズネッツの提起した貯蓄率変動の理論的解明という目的とから,いわゆる消費関数論争が展開された。その論争のなかでM.フリードマンは,恒常所得仮説permanent income hypothesisを提唱した。フリードマンは,実際に観測される所得measured incomeを恒常的所得部分permanent incomeと変動的所得部分transitory incomeに分けたうえで,貯蓄率の変動を前者の恒常所得に依存する長期的趨勢分と後者の変動所得に依存する短期的変動分とに分けて説明しようと試みる。…

【シカゴ学派】より

…いずれもシカゴ大学がそれぞれの分野で,ある時期に世界的影響を与えたことから発生した用語である。経済学・社会思想の分野におけるこの学派は1940年代のF.A.ハイエクに代表され,ハイエクがシカゴを去ったのちには,マネタリズム(新貨幣数量説)の提唱者でもあるM.フリードマンがその代表的学者と考えられることが多い。ハイエクの思想はアダム・スミスの考えを現代的に深化・拡大したものであり,最もすぐれた現実的社会経済体制は民主主義のもとにおける市場経済であることを,一つの社会経済理論として確立した。…

【フィリップス曲線】より

…たとえば失業を減らすにはある程度のインフレの悪化はやむをえない,という当時(1960~70年代)の一般的考え方の根拠ともなった。しかし1960年代に新貨幣数量説(〈マネタリズム〉の項参照)をかかげたM.フリードマンやフェルプスEdmund Strother Phelps(1933‐ )によって,長期的に安定したフィリップス曲線は理論的には存在しえないことが指摘された。すなわち図のような曲線は,人々のインフレ率についての予想が変わらないときのみ(つまり短期にのみ)存在するので,インフレが進行して人々の予想が変化するときは曲線自体が無限に移動するため,図のような安定した関係は消滅するのである。…

【福祉社会】より

…そうした貧困を緩和する政策として,一方で従来の選別的な救貧施策を充実しようとしたのに対して,他方では,むしろ普遍的な制度を活用して解決を図るべきだとする意見が高まった。そこから選別性対普遍性selectivity vs. universalityの論争が続くことになるが,その場合,経済学者M.フリードマンらは〈負の所得税〉という福祉外の普遍的な制度への依存を説き,社会福祉関係者は児童手当という普遍的な福祉制度の拡充を主張した。イギリスの場合,低経済成長が抜本的改正を許さなかったから,現実には選別的な公的扶助を普遍的な社会保険に一体化するという妥協的方策がとられてきた。…

【マネー・サプライ】より

…したがって価値保蔵手段としての通貨という場合にも,現金のみではなく,広義マネー・サプライをみるほうが適切である。
[マネタリズムとマネー・サプライ]
 経済理論の分野でマネー・サプライが脚光をあびるようになったのは,M.フリードマンを中心とするマネタリズムの主張に負うところが大きい。フリードマンは,アメリカの50年以上にも及ぶ時系列データを調べた結果,マネー・サプライ残高で名目所得を除した比率(通貨の流通速度)のほうが,財政支出で所得を除した比率(所得乗数)よりも安定していることを示し,名目所得に対する効果はマネー・サプライのほうが財政支出よりも安定しているとし,マネー・サプライ・コントロールのほうが財政支出政策よりも有効性が高いと主張した。…

【マネタリズム】より

…ケインズ学派を批判して1960年代に台頭した学派で,その首唱者はM.フリードマンである。この学派の人々をマネタリストmonetaristと呼ぶ。…

※「フリードマン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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