フリードマン(Bruce Jay Friedman)(読み)ふりーどまん(英語表記)Bruce Jay Friedman

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

フリードマン(Bruce Jay Friedman)
ふりーどまん
Bruce Jay Friedman
(1930―2020)

アメリカの小説家、劇作家。ニューヨーク市ブロンクス出身のユダヤ系。ミズーリ大学でジャーナリズムの学士号を取得、2年間空軍に勤務したあと、男性誌の編集に従事した。小説『スターン』(1962)で、郊外中産階級を夢みる平凡なユダヤ人が、不条理な現代アメリカ社会に翻弄(ほんろう)される姿をペーソスユーモアを交えて描き、ブラック・ユーモアの旗手として知られた。自ら序文を付した編著に『ブラック・ユーモア』(1965)がある。1960年代を代表する作家の一人として、『スターン』のほか、『お母さんのキス』(1964)、『刑事(でか)』(1970)などは日本でも翻訳された。また、戯曲『スクーバ・ドゥーバ』(1967)はブロードウェーで成功を収めた。70年代には映画台本の執筆に転じ、共同執筆のコメディスプラッシュ』(1984)はアカデミー賞の脚本賞にノミネートされている。『ハリー・タウンズについて』(1974)、『トウキョウの災い』(1985)、『現代の風潮』(1989)、『お父さんのキス』(1996)などの小説も書いているが、1953年から1995年にわたって書かれた独特の黒いユーモアに富む短編は『ブルース・ジェイ・フリードマン短編集』(1995)に集められ、改めて注目された。ほかにジャーナリストとして『プレイボーイ』、『エスクワイア』などの雑誌に寄稿したノンフィクションの文章があり、また皮肉なユーモアの持ち味をいかんなく発揮したエッセイは、『淋(さび)しい男の人生読本』(1978)、『いささか年老いた男』(1995)にまとめられている。

[北山克彦]

『沼沢洽治ほか訳『今日の英米演劇 第5』(1968・白水社)』『朝倉久志ほか訳『ブラック・ユーモア選集 第6巻外国篇 短篇集』(1970・早川書房)』『朝倉久志訳『世界の短篇 黒い天使たち』(1972・早川書房)』『沼沢洽治訳『世界の文学 刑事(でか)』(1979・白水社)』『沼沢洽治訳『スターン氏のはかない抵抗』(1984・白水社)』『沼沢洽治、佐伯泰樹編『笑いの新大陸――アメリカ・ユーモア文学傑作選』(1991・白水社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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