フリント(英語表記)flint

翻訳|flint

精選版 日本国語大辞典 「フリント」の意味・読み・例文・類語

フリント

〘名〙 (flint)
打製石器素材の一つ。硬質で結晶状をなす硅石(けいせき)の一つ。ヨーロッパの旧・中・新石器時代にわたって使用された。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕
火打石
ライターの点火用石。

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デジタル大辞泉 「フリント」の意味・読み・例文・類語

フリント(flint)

火打ち石」に同じ。
ライターの着火装置の一。やすりとこすり合わせて火花を出し、燃料に引火させるもの。鉄とセリウムの合金が用いられる。発火石。→フリント式ライター

フリント(Flint)

米国ミシガン州南東部の都市。デトロイトの北西約90キロメートル、フリント川沿いに位置する。ゼネラルモーターズ企業城下町として発展。工場閉鎖に伴って人口が大きく減少した。

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改訂新版 世界大百科事典 「フリント」の意味・わかりやすい解説

フリント
flint

岩石学的にはチャートの一種で,微晶質石英,玉髄,タンパク石(オパール)などの鉱物の集合体をいい,緻密(ちみつ)で硬く,ほとんどがケイ酸からなる。一般に灰白色で,不純物により黄・褐・紅色などを呈する。貝殻状断口を示す。フリントは石灰岩粘板岩と互層するものもあるが,石灰岩中にノジュール(団塊)状に産することが多く,ヨーロッパのチョーク中のものが有名。ケイ質の海生生物の遺骸が集積したり,石灰岩が交代されてできることが多い。
執筆者:

緻密で硬く,打ち割りの反応がすばやく,かけらの縁は鋭いので,ヨーロッパを中心にアフリカ,西アジアでは石器用の石材として旧石器時代前期から広く利用されてきている。ケイ質の岩石であるという点で日本の石器に使用されているケイ岩類も同じであり,良質な部分の緻密さ,硬さは変わらない。フリンティ・ストーンとしてまとめられることもある。火打石としても用いられ,鉄片と打ち合わせて火口に点火させる。16世紀以降の鉄砲にフリント片を鉄芯でたたいて発火させる方式のものがあり(この石片をガン・フリントと呼ぶ),イギリスでの加工をみると,石器時代の石刃づくりによく似た技術が使われていることで知られる。
火打石
執筆者:

フリント
Flint

アメリカ合衆国ミシガン州東部の工業都市。人口11万8551(2005)。デトロイトの北西90kmにあり,フリント川に臨む。自動車工業の中心地として知られる。1819年毛皮交易所として開設されたときにはチペワ・インディアン居住地であった。その後農林業の中心地となったが,19世紀後半には馬車製造業の発展がみられた。1904年世界初の自動車工場ビューイック・モーター・カンパニーが設立され,以後自動車産業都市として発達ゼネラル・モーターズの工場群が立地し,労働人口の半数が同社に雇用されている。1919年創設のゼネラル・モーターズ・インスティチュートなどの大学がある。
執筆者:

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岩石学辞典 「フリント」の解説

フリント

珪質の複合岩で,オパール,カルセドニイ,微晶質石英などが一種あるいは数種集まったもの.これは固結物,団塊,層などとして産出する.タールによればフリントはチャートと同意語で,タールはこの語を加工品に限定すべきとしている[Tar : 1938].しかし英国ではこの語は広く使用され,特にセノマニアン紀のチョークに産する黒色,褐色,灰色の珪質団塊に用いられる.これは海綿の骨片,有孔虫,貝殻の破片,時にウニ類あるいはイノセラムスが含まれる.フリント団塊は一般に多孔質シリカのチョーク質の古い色をもち,壊れると貝殻状断口を示す[Pettijohn : 1975].フリントの名称の由来は不明であるが,おそらく古い英語のflyhtで飛行(flight)の意味で,矢の頭に付けるのに用いたことによるらしい.古い名称ではflystan, flyntといった[Tomkeieff : 1983].

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百科事典マイペディア 「フリント」の意味・わかりやすい解説

フリント

火打石。チャートと同義,厳密にはフリント型チャート。赤,緑,黄などの色調のかかった灰黒色のものが多く,石灰岩などの中に団塊,レンズ状として産出。日本では秩父古生層とそれに続く古い中生層に広く分布。緻密(ちみつ)で硬く,剥離(はくり)が容易で,砕片が鋭い刃状を呈するため,ヨーロッパでは旧石器時代以来長く打製石器原料として使われた。また発火具としての火打石にも用いられた。
→関連項目打製石器火打石

フリント

米国,ミシガン州の工業都市。デトロイト北西に位置し,デトロイトを中心とする巨大な自動車工業地帯の一翼をになう。ゼネラル・モーターズ(GM)の発祥地で,組立工場,各種部品工場のほか,塗料,鋼材,セメントブロックなどの工場も多い。10万2434人(2010)。

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色名がわかる辞典 「フリント」の解説

フリント【flint】

色名の一つ。フリントとは火打石のこと。火打石のような暗く濃い灰色をさす。に近い。火打石は石英の一種の燧石すいせきなどを使用し、古くは石と石を打ち合わせて火をおこした。鉄が発明されると、石と鉄を打ち合わせた。これは、およそ世界共通とされる。やや明るい色はフリントグレイと呼ばれる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フリント」の意味・わかりやすい解説

フリント
Flint

アメリカ合衆国,ミシガン州中東部にある都市。デトロイトの北西約 100kmに位置する。 1819年入植,マツを中心とする木材工業と農業が主産業であったが,86年二輪馬車の生産が始り,1900年までには年産 10万台に達した。 03年ビュイック・モーター社ができると,自動車部品の製造に転じ,08年ゼネラル・モーターズ社設立後は,市の主要な自動車工場は同社に統合され,デトロイトに次ぐ自動車工業の大中心地となった。人口 14万 761 (1990) 。

フリント
Flint, Timothy

[生]1780.7.11. マサチューセッツ,ノースレディング付近
[没]1840.8.16. レディング
アメリカの牧師,小説家,歴史家。 1800年ハーバード大学卒業後,牧師としておもに西部,南部で布教活動を行なったが,病を得てから著述に専念し,歴史書,伝記,小説などを書いて西部文学の開拓者となった。小説『フランシス・ベリアン』 Francis Berrian: or The Mexican Patriot (1826) など。

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化学辞典 第2版 「フリント」の解説

フリント
フリント
flint

石英の一種.角岩,ひうち石,チャートなどとよばれることがある.主成分はSiO2であるが,不純物により着色し,ち密で硬く,貝殻状断口を示す.けい質海生生物の遺骸が溶けたものからできる.石器として用いられた.

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世界大百科事典(旧版)内のフリントの言及

【交易】より

…弥生時代の福岡県今山産の玄武岩製の石斧や,同県立岩産の輝緑凝灰岩製の石庖丁において製品の交易が説かれているが,石材や製品が交易されたのか,製作者が石材産地に出向いたのかは未解決である。ヨーロッパでは石器の石材にフリントが多く使われたが,イギリス諸島では四つの産地が著名である。その一つのグライムズ・グレーブズ遺跡では大きな採石場があり,ここのフリントはイギリス各地に流通した。…

【チョーク】より

…チョークは以前には無機的な炭酸石灰の沈殿物と考えられていたが,電子顕微鏡の発達により,これが主として浮遊性藻類であるコッコリトフォリーダの遺骸(コッコリス)から形成されていることが明らかとなった。しばしばフリントの団塊を含み,場所によってはアンモナイト,ベレムナイト,二枚貝,ウニなどの化石を含む。一般に方解石からなる貝殻はよく保存されているが,アラゴナイトの殻は溶け去っている場合が多い。…

※「フリント」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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