フランケンシュタイン(シェリー夫人の小説)(読み)ふらんけんしゅたいん(英語表記)Frankenstein, or the Modern Prometheus

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

フランケンシュタイン(シェリー夫人の小説)
ふらんけんしゅたいん
Frankenstein, or the Modern Prometheus

イギリスのシェリー夫人(メアリー・ウルストンクラフト・シェリー)の長編小説。1818年刊。バイロン、シェリーとジュネーブ滞在中、現実離れした恐怖とサスペンスで当時流行したゴシック小説を競作しようという提案で書き出された作品。青年フランケンシュタインは、錬金術から自然科学にわたる研究の結果、生命の秘密を探り当て、電気治療などを応用して人間をつくりだす。醜悪な外見のため人間社会から疎隔され、また知能は赤子同然のその人造人間の復讐(ふくしゅう)により、彼は親しい友人を次々に殺される。彼は極地流氷にまで妖怪(ようかい)を追い詰めるが、疲労と錯乱の果てに死に、妖怪は何処(いずこ)かに去る。理性によって人間は完全になりうるという、当時のロマン主義者に影響を与えたゴドウィンの思想に基づくロマンチックな教育観・人間観と、さらに、当時の自然科学の知識を結び付けた作品であり、後のSFにも多大の影響を与えている。

[佐野 晃]

 この小説は1931年、アメリカのユニバーサル映画社の恐怖映画の一編として映画化(監督ジェームズ・ホウェール)されて大ヒットした。そしてボリス・カーロフ扮(ふん)する人造人間(モンスター)の印象があまりにも強烈であったため、フランケンシュタインをモンスターの名前とする錯覚混乱まで生じた。以後『フランケンシュタインの花嫁』(1935)からメル・ブルックスの『ヤング・フランケンシュタイン』(1974)に至るまで、多く続編パロディーがつくられている。

[森 卓也]

『山本政喜訳『フランケンシュタイン』(角川文庫)』

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