フラミンゴ(英語表記)flamingo

翻訳|flamingo

精選版 日本国語大辞典 「フラミンゴ」の意味・読み・例文・類語

フラミンゴ

〘名〙 (flamingo) フラミンゴ科の鳥の総称。五種がアフリカ、南欧、中央アジア、アメリカ熱帯地方に分布する。首と足が非常に細長く、足には水かきがあり、奇妙な形の嘴を持つ。羽色はふつう淡赤色で、種類によって濃淡がある。汽水アルカリ性の湖にすみ、浅い泥上に増殖する微小な藻類や小動物を、下に曲がった嘴を使って漉(こ)し分けて食べる。集合性が強く、時に何十万羽の群れになる。フラミンゴ科だけでフラミンゴ目をなすが、系統的にはカモ目コウノトリ目の両方に類縁があると考えられ、分類上の位置は一定しない。べにづる。
旅日記から(1920‐21)〈寺田寅彦〉七「紅鶴(フラミンゴ)の群が一杯居る」

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デジタル大辞泉 「フラミンゴ」の意味・読み・例文・類語

フラミンゴ(flamingo)

フラミンゴ目フラミンゴ科の鳥の総称。全身淡紅色で、首と脚が長く、くちばしは「く」の字形に曲がり、上くちばしを動かして水中からえさをして食べる。アフリカ・インド南アメリカなどの熱帯地方に6種ほどが分布、大群で海岸や湖にすむ。紅鶴べにづる

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改訂新版 世界大百科事典 「フラミンゴ」の意味・わかりやすい解説

フラミンゴ
flamingo

コウノトリ目フラミンゴ科Phoenicopteridaeの鳥の総称。この科は3属5種よりなり,新旧両世界の温帯,熱帯に分布している。全長80~130cm。くちばしから足の先まで測ると1~2mもある大型の渉禽(しようきん)で,くびと脚が非常に長い。体重は2.5~3kg。羽色は体の大部分がピンクか赤色で(色がうすいと白色に近くなる),風切羽は黒い。フラミンゴ類の最大の特徴は,ぶ厚いくちばしと独得の餌のとり方である。このくちばしは中央で下に折れ曲がり,下くちばしはぶ厚く樋状,上くちばしは下くちばしに対してふた状をしている。舌もぶ厚い。くちばしの縁には細かい櫛歯(くしば)状のろ過器があり,上くちばしのほうを下にしてくちばしを水の中に入れ,水や泥を口の中に吸い込み,水泥中の微細な食物をろ過器でとり分けて食べている。食物は小型種ではケイ藻やラン藻類だが,オオフラミンゴプランクトン,小型の貝や甲殻類なども餌とする。このため,くちばしやろ過器の構造と採食法は種によって多少違っている。

 フラミンゴ類は,しばしば一つの湖沼に2~3種が共存し,しかも数十万つがいから100万つがいの大集団で繁殖している。こうした数種の大集団が可能であるのは,短期間に大量に増殖する藻類やプランクトンを餌としていることと,種によって餌のとり方が違うためである。したがって,フラミンゴはこうした餌の豊富なアルカリ性や塩水の湖沼や潟湖に生息している。温帯や高山の湖で繁殖するものは,冬季温暖な地方で越冬する。

 飛行時には長いくびと脚をまっすぐのばし,飛翔(ひしよう)中にグヮン,グヮンと聞こえるガンに似た鳴声を出す。巣は湿地の中に,泥を底辺の直径40~80cm,頂上部の直径約30cm,高さ12~48cmの円錐形に盛り上げ,頂上部の浅いくぼみに1腹1個(まれに2個)の白い卵を産む。抱卵期間は28~30日。雌雄とも抱卵,育雛(いくすう)をする。雛は,孵化(ふか)したときは白色の羽毛におおわれ,くちばしは他の鳥のくちばしとそう違わない。孵化後4~7日に,雛は両親とともに巣を離れる。雛は歩くのも速く,泳ぐのもうまい。まもなく,雛は数羽の成鳥に守られた雛だけの群れの中に入る。孵化後2~3週間して2回目の幼羽が生えそろい,くちばしは中央で曲がり始める。孵化後約70日で飛ぶことができるが,くちばしのろ過器はまだ十分に発達していない。したがって,雛は生後2~3ヵ月の間ほとんど自分で餌をとらず,両親の食道壁から分泌される牛乳状の分泌物によって養われる。両親は雛の大群の中から声をたよりに自分の雛をまちがいなく見つけ出し,餌を与える。雛は1~1.5年で成鳥と同様になるが,繁殖するのは4~6歳以後である。

オオフラミンゴPhoenicopterus ruberはいちばん大型種で,南ヨーロッパ,アフリカ,カスピ海沿岸,インド北西部,カリブ海沿岸で繁殖する。チリーフラミンゴP.chilensisは,オオフラミンゴに似ているが少し小型。ペルーからチリ南部にかけて,アンデスの湖沼で繁殖している。コフラミンゴPhoeniconaias minorはチリーフラミンゴとほぼ同じ大きさで,アフリカおよびインド北西部で繁殖する。この種はいちばん数が多く,ケニアのマガディ湖だけで300万羽,世界で少なくとも600万羽が生息する。アンデスフラミンゴPhoenicoparrus andinusとコバシフラミンゴP.jamesiは,ボリビア周辺のアンデス高地の湖沼にすむ小型種で,後指のないのが特徴。コバシフラミンゴはいちばん数が少なく,生息数は約2万2000羽(1973)と推定されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フラミンゴ」の意味・わかりやすい解説

フラミンゴ
ふらみんご
flamingo

鳥綱フラミンゴ目フラミンゴ科に属する鳥の総称。この科Phoenicopteridaeの仲間は、世界の熱帯を中心に分布し、3属4種6亜種がある。頸(くび)が体に比べて異常に長くて細く、足も長く足指には水かきがある。足の長い点がツルに似ており、体に紅色を帯びているところからベニヅルともよばれる。風切(かざきり)は黒い。嘴(くちばし)はくの字に曲がった独特の形をし、構造が一般の鳥と逆で、下嘴が固定されて上嘴が蓋(ふた)のようにかぶさって動く。餌(えさ)をとるときには頭を垂れて、先端が後方に向くようなかっこうで嘴を水中や泥の中に浸す。嘴や舌の両側は櫛(くし)状になっており、上嘴と舌を動かして口の中の泥水を濾過(ろか)し、藻類やプランクトンを食べる。飛ぶときは長い頸と足を前後に伸ばし、短めの翼を小刻みに羽ばたいて直線的に飛ぶ。泥性の湖岸や干潟に群れをつくってすみ、繁殖期にも集団でいる。巣は泥を積み上げて臼(うす)状につくり、ここに1個の卵を産む。

 いちばん大形のオオフラミンゴPhoenicopterus ruber roseusは、南フランス、中央アジア、アフリカに分布し、翼長約1.9メートル。体は白くて翼は紅色。南フランスのカマーグは、オオフラミンゴの繁殖地の北限として有名である。ベニフラミンゴP. r. ruberは西インド諸島とガラパゴス諸島に分布し、オオフラミンゴと同種の別亜種とされるが、体の紅色はずっと濃い。チリフラミンゴP. r. chilensisは南アメリカの温帯に分布し、これもオオフラミンゴと同種であるが、体がやや小さく淡紅色。この種は日本でも多く輸入され、公園や動物園でよく飼われている。また逃げ出したものが、海岸や湖沼でときどき記録される。コフラミンゴPhoeniconaias minorはアフリカ、ペルシア湾、インド北西部に分布し、小形で体は淡紅色。アフリカでは数百万羽という大群で生活している。アンデスフラミンゴPhoenicoparrus andinusはアンデス山脈に分布し、足は黄色で後指がない。ジェームスフラミンゴPhoenicoparrus jamesiはボリビア、チリに分布する小形種である。

[高野伸二]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フラミンゴ」の意味・わかりやすい解説

フラミンゴ
Phoenicopteridae; flamingos

フラミンゴ目フラミンゴ科の鳥の総称。ベニヅルともいう。6種からなり,全長 70~120cm。頸と脚が非常に長く,羽色は赤みのあるオレンジ色ないし淡いピンク色である。は下方に曲がった特殊な形をし,長い首を垂れて水面につけると曲がった先が水面と水平になる。合わせ目の縁は櫛状になっていて,舌をポンプのピストンのように動かしてプランクトンなどを水と一緒に吸いこんでからその櫛でこしとって食べる。ヨーロッパ南部やアフリカインド西部,カリブ海地方,南アメリカ南部などに分布する。大きな湖沼に群れをつくってすみ,群れが 100万羽をこす種もある。巣は湿地に土を盛り上げてつくる。

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百科事典マイペディア 「フラミンゴ」の意味・わかりやすい解説

フラミンゴ

ベニヅルとも。フラミンゴ科の鳥の総称。フラミンゴ科は3属5種。動物園には米大陸の熱帯・亜熱帯に分布する紅色のベニイロフラミンゴ,小型で薄桃色のコフラミンゴ等がよく飼われる。体は大型でピンク色か赤色を帯びる。南欧,中央アジア,アフリカに分布し,水辺に群生。泥地に土を積んで巣とする。食物はおもに水中のプランクトンや藻類で,くちばしには細かい櫛の歯状のろ過器があり,長い頸を曲げ,上のくちばしを下側にして,水とともに口に入った餌をとる。
→関連項目ツル(鶴)

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デジタル大辞泉プラス 「フラミンゴ」の解説

フラミンゴ

英国の作家ジョン・ガードナーの長編小説(1983)。原題《Flamingo》。

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