フダンソウ(読み)ふだんそう

改訂新版 世界大百科事典 「フダンソウ」の意味・わかりやすい解説

フダンソウ (不断草)
leaf beet
Swiss chard
Beta vulgaris L.ssp.cicla (L.) Koch var.cicla

葉を食用とするアカザ科の一・二年草。トウチシャともいい,ビート,テンサイと同一種とされる。原種と推定される野生種ハマフダンソウB.maritima L.はヨーロッパの海岸域からアフリカの北部,さらに西アジアからインドの西部まで広く分布している。根は肥大せず,根生葉を群がりつける。葉は太い葉柄があって卵形,全縁で,質は厚いが軟らかい。春に抽だい(とうだち)し,茎はよく分枝しながら高さ1mほどになり,円錐状に花弁のない黄緑色の小さな花を多数つける。栽培が始まったのは東部地中海地方と考えられており,日本には約250年前に中国から入っている。低温・高温下でも発芽し,耐暑性,耐乾性があるので,日本の盛夏においてもよく生育する。たえず葉をかきとって利用できるのでフダンソウの名がついたほどである。作りやすいところから家庭菜園にも取り入れられているが,独特の土臭さが好まれず,あまり普及していない。品種古くから日本で栽培されている早生の小葉種,明治以後フランス産のホワイトリーフが土着したと考えられる晩生の洋種白茎などがある。作型には春から夏にまく普通栽培,秋まきの暖地栽培がある。小葉種を用いてホウレンソウの栽培困難な夏季に,それに代わるものとして栽培される。浸し物,あえ物,油いためなどにして食べる。近縁のものに縮葉性のものvar.crispa Moq.,茎に稜のある飼料用の変種var.sulcata Moq.,そのほか観賞用のものがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フダンソウ」の意味・わかりやすい解説

フダンソウ
ふだんそう / 不断草
[学] Beta vulgaris L. var. cicla L.

アカザ科(APG分類:ヒユ科)の一、二年草。トウヂシャともいう。南ヨーロッパ原産で、サトウダイコンや飼料ビートの近縁種であるが、根は肥大しない。多くの根出葉を次々と出し、葉を順次かき取って葉菜として一年中利用できるので、フダンソウ(不断草)という。2年目の初夏にとう立ちして、草丈1~1.5メートルになり、黄緑色の小花を多数つける。葉は柔らかく、塩ゆで、バター炒(いた)め、煮物などにする。日本には江戸時代以前に伝来した。若い葉はサラダに使われる。

[星川清親 2021年2月17日]


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百科事典マイペディア 「フダンソウ」の意味・わかりやすい解説

フダンソウ

ヨーロッパ原産のアカザ科の一〜二年草。卵形で厚い根出葉を群出し,茎は高さ1mほどで,先端円錐花序を出し,黄緑色の小さな花をつける。ビートと同種であるが根は肥大せず,葉をゆでてサラダなどにする。耐暑性,耐乾性があり,たえず葉を掻きとって利用できるところから不断草の名がある。夏野菜とされる。

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栄養・生化学辞典 「フダンソウ」の解説

フダンソウ

 [Beta vulgaris var. cicla].ナデシコ目アカザ科ドウヂシャ属の二年草.食用にする.

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