日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
フォーサイス(Frederic Forsyth)
ふぉーさいす
Frederic Forsyth
(1938― )
イギリスの小説家。ケント州アッシュフォード生まれ。トンブリッジ・スクールを卒業後、空軍戦闘機パイロットとなったのち、3年間の地方記者生活を経て、ロイターの通信員としてパリ、旧東ベルリンなどで活躍する。その後、BBC放送移籍を経て、フリーのルポライターとしてナイジェリアに駐在した。1969年、内戦を取材したノンフィクション『ビアフラ物語』を出版した。小説としてのデビュー作『ジャッカルの日』(1971)で一躍注目を浴び、映画化されるなど、たちまち世界的なベストセラー作家となった。これは、ド・ゴール大統領の暗殺をめぐる物語で、現実の国際事件を基にリアルな筆致と豊かな想像力で描かれた活劇サスペンスであり、MWA(アメリカ探偵作家クラブ)長編賞を受賞した。続いて、ナチスの犯罪を扱った『オデッサ・ファイル』(1972)を発表。続く『戦争の犬たち』(1974)はフォーサイス自身が、印税を資金として傭兵(ようへい)を雇い、赤道ギニア共和国のマシアス政権転覆を企て失敗したいきさつを小説化したものとされている。その後、作家としての引退を宣言した。しかし、5年後には復活し、『悪魔の選択』(1979)を発表。さらに『第四の核』(1984)、『ネゴシエイター』(1989)などの国際謀略小説を刊行し続けた。1996年には、『イコン』の発表と同時にふたたび引退を宣言したものの、以後、『マンハッタンの怪人』(1999)、短編集『戦士たちの挽歌(ばんか)』(2001)と作品を書き続けている。
[吉野 仁]
『篠原慎訳『ビアフラ物語――飢えと血と死の淵から』(1982・角川書店)』▽『山岸勝栄訳『フォーサイス短編選』(1996・こびあん書房)』▽『伏見威蕃訳『翼を愛した男たち』(1997・原書房)』▽『篠原慎訳『マンハッタンの怪人』『戦士たちの挽歌』(2000、2002・角川書店)』▽『篠原慎訳『ジャッカルの日』『オデッサ・ファイル』『戦争の犬たち』『悪魔の選択』『第四の核』『ネゴシエイター』『神の拳』『イコン』(角川文庫)』