フェルマーの最終定理(読み)ふぇるまーのさいしゅうていり(英語表記)Fermat's last theorem

知恵蔵 「フェルマーの最終定理」の解説

フェルマーの最終定理

17世紀、フランスの数学者フェルマー(P.Fermat)は、nを3以上の自然数とする時、不定方程式x^n+y^n=z^nはxyz≠0となる整数解をもたないであろうと予想した。これがフェルマーの最終定理と呼ばれるようになった予想。彼は、所有していた古代ギリシャの数学書『算術』(ディオファントス著)の余白に「私はこのことの真に驚くべき証明を発見したが、それを記すには余白が小さすぎる」という有名なラテン語のメモを残した。彼自身、無限降下法という論法を用いて、n=4の場合に証明したが、一般のnに対しては証明できていなかったといわれている。実際、多くの数学者の努力にもかかわらず300年以上の間、一般のnに対する解法を見つけることができなかったが、1994年、ワイルズ(A.Wiles)は、テイラー(R.L.Taylor)の協力を得てこの予想を証明した。この問題が、志村谷山(谷山・志村)予想という数論の重要な問題に帰着することを用い、志村・谷山予想の主要部分を解決することによって解いたのである。一方、n=2の場合には、無限に多くの解が存在する。3^2+4^2=5^2、5^2+12^2=13^2、8^2+15^2=17^2など。「直角三角形直角を挟む2辺の長さをa、bとし、直角の対辺の長さをcとする時a^2+b^2=c^2が成立する」というピタゴラスの定理(Pythagoras' theorem)と関連して、各辺の長さが整数の直角三角形が無数に存在することがわかる。

(桂利行 東京大学大学院教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

法則の辞典 「フェルマーの最終定理」の解説

フェルマーの最終定理【Fermat's last theorem】

n が3以上の場合,方程式 xnynzn の自然数解は存在しないという定理.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のフェルマーの最終定理の言及

【フェルマーの大定理】より

…P.deフェルマーはバシェBachet版のディオファントス著作集の余白に,次の命題〈nが3以上の自然数のときには,不定方程式〉 xnynzn〈はxyz≠0であるような整数解をもたない〉の驚くべき証明を発見したが,その証明を記すにはこの余白は狭いという意味のことを書いた(1637年ころ)。この命題は,フェルマーの大定理,あるいは最終定理と呼ばれる。この不定方程式のn=2の場合の解はピタゴラス数と呼ばれ,ギリシア時代から無限に存在することが知られており,この命題とは著しい対比をなしている。…

※「フェルマーの最終定理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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