フェリ(英語表記)Ferri, Enrico

改訂新版 世界大百科事典 「フェリ」の意味・わかりやすい解説

フェリ
Enrico Ferri
生没年:1856-1929

イタリア刑法学者,刑事学者,政治家。サン・ベネデット・ポー生れ。ボローニャ大学で法律学を研究,パリに留学し,フランス犯罪統計学派の影響を受けた。帰国後,C.ロンブローゾに学び,のちボローニャ大学,ローマ大学の刑法教授となる。ロンブローゾ,R.ガローファロとともにイタリア実証学派を形成した。犯罪に関する抽象的・非現実的な研究を行ってきた古典派刑法学を批判し,犯罪人に対する実証的・科学的研究に基づいた犯罪理論の必要性を説いた。彼は,犯罪の原因を,(1)人類学的原因,(2)物理的原因,(3)社会的原因に区別し,その結論として,これらの原因が一定量存する社会には一定量の犯罪が発生するとして犯罪飽和の原則を主張した。さらに,彼は,刑罰は犯罪との闘争手段としては無力であるとして否定し,犯罪原因に基づく犯罪人分類に対応した犯罪対策として,刑罰以外の,刑罰を補充する方策の必要性を指摘した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェリ」の意味・わかりやすい解説

フェリ
Ferri, Enrico

[生]1856.2.25. サンベネデットポー
[没]1929.4.12. ローマ
イタリアの刑法学者,政治家。 1877年ボローニャ大学で学位を得,パリ大学に遊学,84~1929年ボローニャ,シエナ,ピサ,ローマ各大学の刑法教授を歴任。 1886~1919年社会党代議士,26年ファシズムに転じ 29年上院議員。ロンブローゾ学説を発展させ,刑法における実証主義学派を創設した。 19年刑法改正王室委員会委員として改正案の作成にあたり,その草案は,21年ローマで『イタリア刑法草案』 Pro-getto di codice penale italianoとして公刊された。主著『犯罪社会学』 Sociologia criminale (1889) ,『犯罪論』 Studi sulla criminalità (1901) ,『刑法原理』 Principii di diritto criminale (28) 。

フェリ
Ferri, Ciro

[生]1628/1634. ローマ
[没]1689.9.13. ローマ
イタリアの画家,版画家。 P.コルトナ弟子で歴史画を得意とし,主として師とともに制作し,また見分けがたいほどよく似たコルトナの模作も残した。ローマ,ベルガモの教会フレスコ画を制作。ローマにおけるフィレンツェ派の指導者で,弟子には A.ガッビアーニがいる。代表作『ベッドホメロスを読むアレキサンドロス大王』 (フィレンツェ,ウフィツィ美術館) 。

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367日誕生日大事典 「フェリ」の解説

フェリ

生年月日:1856年2月25日
イタリアの刑法学者,政治家
1929年没

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世界大百科事典(旧版)内のフェリの言及

【刑法理論】より

…新派の特色は,当時の自然科学の発展とも関連して,実証科学的方法により犯罪とくに犯罪者を研究し,犯罪予防による社会防衛を目的とする理論と刑事政策を示したことにある。新派の源流は,イタリアのロンブローゾフェッリにある。人類学的研究に基づいて〈生来性犯罪人〉の類型が存在することを主張したロンブローゾは,新派の先駆者であった。…

【犯罪学】より

…そのほか次に述べる犯罪社会学の理論の中にも社会心理学的色彩の強いものが存在する。
[犯罪の社会学的要因]
 犯罪の社会的要因を重視する立場は,ロンブローゾを継ぎ,《犯罪社会学》(1884)を著し,〈犯罪飽和の法則〉を主張したフェッリや,フランス環境学派のラカッサーニュA.Lacassagne,〈模倣の法則〉を提唱したタルド,社会が一定の行為を犯罪として処罰することは社会の発達の要件であり,一定率の犯罪は社会にとって正常で必然的な現象であるとして,犯罪原因を社会構造自体に求めたデュルケームなどにみられるが,犯罪社会学の理論はその後アメリカにおいて飛躍的な発展を遂げた。 アメリカ犯罪社会学の犯罪・非行理論のうち1930年代から50年代ごろまでの理論は,個人の非行文化への接触と非行文化の伝達の過程を問題とするシカゴ学派の理論と,犯罪・非行を社会構造との関係でとらえるアノミー理論の二つの流れに大別することができる。…

※「フェリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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