化学辞典 第2版 「フェライト(酸化物)」の解説
フェライト(酸化物)
フェライトサンカブツ
ferrite
スピネル型構造を有する二価金属 MⅡの亜鉄酸塩MⅡO・FeⅢ2O3.強い磁性を示すものは逆スピネル型構造をとるものが多い.すなわち,4個の O-Ⅱで正四面体的に囲まれたA格子点(8a位置)を FeⅢが占め,6個の O-Ⅱで正八面体的に囲まれたB格子点(16d位置)には,残りの同数の FeⅢと MⅡとが入る場合が逆スピネルであり,A格子点のスピンとB格子点のスピンとが,
のように酸素を介しての超交換相互作用によって反平行に並ぶため,FeⅢのスピンはA,B両格子点で互いに打ち消し合い,結果的にはB格子点の MⅡのスピンのみが生き残ってフェリ磁性を示す.自発磁化は0.5 Wb m-2 程度,キュリー温度は比較的低く500 ℃ 以下のものが多い.軟磁性フェライトは金属や合金系の磁性体に比べて抵抗率が高いので,低損失の特性を活用して高周波用の磁心材料として汎用されている.実用的にはZnフェライトとの複合フェライトとして用いられ,代表的なものとしてMn-Zn,Ni-Znフェライトなどがある.一方,硬磁性を示すものとしては古くからCoフェライトとFe3O4との固溶体が知られている.磁気記録体材料としてテープやディスク,メモリ素子などに用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報