フェニレンジアミン

化学辞典 第2版 「フェニレンジアミン」の解説

フェニレンジアミン
フェニレンジアミン
phenylenediamine

benzenediamine.C6H8N2(108.14).C6H4(NH2)2ジアミノベンゼンともいう.二つのアミノ基の相対的位置によりo-,m-およびp-フェニレンジアミンの3種類の異性体がある.o-およびp-フェニレンジアミンは,それぞれ対応するニトロアニリンを還元して,m-フェニレンジアミンは,m-ジニトロベンゼンを還元してつくられる.【o-フェニレンジアミン:淡褐色の板状晶.融点102~103 ℃,沸点257 ℃.Ka 3.3×10-10(25 ℃).エタノールエーテルクロロホルムなどに可溶.縮合反応により種々の複素環化合物を生じ,1,2-ジケトンの検出に用いられる.LD50 1070 mg/kg(ラット経口).【m-フェニレンジアミン:白色の結晶であるが,空気中で酸化されて赤褐色となる.融点63~64 ℃,沸点287 ℃.水,エタノールに易溶,ベンゼン,トルエンなどに難溶.イオン交換樹脂,写真用材,そのほかに使用される.LD50 650 mg/kg(ラット,経口).【p-フェニレンジアミン:板状晶.融点140 ℃,沸点267 ℃.空気中で褐色に酸化される.エタノール,クロロホルム,エーテルに可溶,冷水に微溶.毛皮毛髪を黒く染める.N,N-ジメチル体はα-ナフトールとインドフェノール呈色を示す.LD50 80 mg/kg(ラット,経口).これらは共通して,アゾ染料硫化染料中間物として広く利用されている.また,皮膚に強い刺激性をもち,発がん性の可能性がある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「フェニレンジアミン」の意味・わかりやすい解説

フェニレンジアミン
phenylenediamine

ジアミノベンゼンともいう。o-体(融点103.8℃,沸点252℃),m-体(融点62.8℃,沸点287℃),p-体(融点147℃,沸点267℃)の3異性体がある。o-体,p-体は,アセトアニリドニトロ化してo-およびp-ニトロアセトアニリドとし,両者を分離したのち,それぞれを加水分解して得られるo-およびp-ニトロアニリンを還元してつくる。m-体は,ニトロベンゼンをニトロ化してm-ジニトロベンゼンとし,これを還元してつくる。

3異性体ともに染料原料として使われる。また,p-体には毛髪染料,加硫促進剤,m-体にはイオン交換樹脂の原料,エポキシ樹脂の硬化剤などとしての用途がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェニレンジアミン」の意味・わかりやすい解説

フェニレンジアミン
phenylenediamine

ジアミノベンゼンのこと。化学式 C6H4(NH2)2 。3種の異性体がある。相当するジニトロベンゼンまたはニトロアニリンを還元剤により,あるいは触媒を使って水素還元して製造する。 (1) o 体 葉状晶 (水から再結晶) ,板状晶 (クロロホルムから再結晶) 。融点 102~103℃。特殊建染め染料の中間体。 (2) m 体 菱形の結晶 (エチルアルコールから再結晶) 。融点 63~64℃。アゾ系の塩基性染料,媒染染料,直接染料および酸性染料の中間体。 (3) p 体 板状晶 (エーテルから再結晶) 。融点 140℃。媒染剤の違いにより毛皮を種々の色に染められるので,毛皮の酸化染料として使われ,また毛髪の染料や木綿の捺染にも使われる。アゾ系の分散性染料,酸性染料,直接染料,硫化染料などの中間体となる。

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