日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
フィロン(ユダヤ人哲学者)
ふぃろん
Philon
(前20ころ―後50ころ)
ユダヤ人哲学者。彼の家庭はローマ皇帝と親交があり、ユダヤ王家と姻戚(いんせき)関係にあった。紀元後38年のアレクサンドリアのユダヤ人大迫害ののち、彼はユダヤ人の政治的権利を弁護するために、使節団長としてローマのカリグラ帝のもとに派遣された。著作の大部分はモーセ五書の注解であり、寓意(ぐうい)的方法を用いて文字の背後にある哲学的意味を探ろうとした。プラトンのイデア論、ストア哲学のロゴス論の多大な影響を受けたが、彼の思想の基本はユダヤ教信仰である。人間の至福は魂が神をみることにあるが、神の一方的な恵みだけがそれを可能にすると説いた。彼のロゴス(神と世界との媒介者)の思想はキリスト教教父に大きな影響を与えた。
[梅本直人 2018年4月18日]
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