フィリップ(2世)(ブルゴーニュ公)(読み)ふぃりっぷ(英語表記)Philippe Ⅱ

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

フィリップ(2世)(ブルゴーニュ公)
ふぃりっぷ
Philippe Ⅱ
(1396―1467)

フランスのバロア家系第3代ブルゴーニュ公(在位1419~67)。あだ名は善良公le Bon。百年戦争中、1419年非業の死を遂げた父公を継いで、イングランド・ランカスター王家との同盟に踏み切る。翌年ランカスター王家とバロア王家の和平斡旋(あっせん)し(トロアの和約)、1422年、イングランド王ヘンリー5世とフランス王女マルグリットとの間の子ヘンリー(アンリ)6世がたって両王家が合同すると、関心をネーデルラントに向け、その地の諸公伯領の領有を図った(ネーデルラント継承戦争)。その間、北フランスはヘンリーの叔父ベドフォード公ジョンが、ロアール川以南は廃嫡された王太子シャルル・ド・バロア(後のシャルル7世)の臨時政府が押さえ、いずれもフィリップ出方をうかがう態勢をとった。1428年ネーデルラントの取得が事実上なり、ここにブルゴーニュ公家の版図は南東フランスのブルゴーニュからネーデルラントにかけて帯状に形成され、昔の「ロタールの国」の再現を思わせた。しかし1429年オルレアンの攻防を経て、1435年アラスの和約にフィリップはシャルル7世と和解し、フランスの外に国家を建てる機会を自ら捨てた。「お人よし」を意味するあだ名の由来はここに求められる。彼の代、公国財政規模はバロア王家を除いてヨーロッパ最大であり、彼はフランス王に臣従せず、まさに「西方大公」の尊称にふさわしかった。しかし公国は国家としての一体性を欠き、彼の親フランス王家志向はネーデルラントの離反を招いた。

[堀越孝一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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