出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
羊毛のセーターの表面でみられる小さなふわふわした玉すなわち毛玉pillのできること。初期のナイロンやポリエステル繊維にもみられたが,原因を調べて解決された。毛玉は,織物や編物の糸に含まれている短い繊維が,織物の摩擦によって移動して互いに絡み合うことによってできる。ピリングは同じ布でも着る人によって発生のしかたが異なり,活動的な人ほどできやすい。紡糸法でもピリングの現れ方が違い,絹は最も出にくく,次にウーステッド,綿系の順序で,羊毛系がいちばん出やすい。ナイロンやポリエステル繊維のような強い繊維と羊毛の混紡では,強い繊維を含む毛玉が切断しないためにピリングが起こりやすいのである。ピリング防止の重要な工程として毛焼きとヒートセットがある。化学的加工法として,ポリエステル繊維の強度を低下させるための溶媒処理法,繊維の摩擦係数を上げるための樹脂加工法などがある。また原糸の段階で改質する方法が多く用いられるようになった。
執筆者:瓜生 敏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
織物,メリヤスなどの布地の表面の繊維が摩擦によって,繊維がからみあった小さい毛玉(pill)ができること.その結果,織物表面の外観は損なわれる.ピリングの原因として,繊維の強度がとくに大きいこと,引き伸ばされた後の回復時に巻戻りがあること,帯電性があることなどがある.繊維を太くする,糸のよりを強くする,単糸を避け,より合わせた双糸を用いる,ヤング率を低下させた繊維を用いる,などの対策が行われている.織物よりメリヤスのほうが毛玉が生じやすい.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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