ピッチアップ(読み)ぴっちあっぷ(英語表記)pitch up

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピッチアップ」の意味・わかりやすい解説

ピッチアップ
ぴっちあっぷ
pitch up

航空機が音速に近い高速度(遷音速)で飛行しているとき、速度がある値を超えると、急激に機首上げの状態に入ったり、機首を引き起こす操作をしたとき、予期以上に機首上げの状態になる現象で、タックアンダーの後に発生する。どちらも衝撃波の影響とされ、次の理由が考えられる。(1)音速付近では風圧中心が移動する。つまり亜音速では翼弦の25%付近(前縁から)にあるが、音速に近くなると翼の前縁近くまで急激に前進する(音速を超えると50%付近まで後退する)。(2)速度が増大するにしたがって、初め主翼の上面にのみ衝撃波が発生していたのが、下面にも発生するようになり、水平尾翼に向かって吹き下ろす気流の角度が変化する。(3)水平尾翼に衝撃波が発生して昇降舵(だ)の効きが低下するが、その際大きな舵角で引き起こすと、それに伴う速度の低下で衝撃波が消え、大きく切った昇降舵の効きが直接現れるようになる。対策としては、水平尾翼の後退角を主翼より大きくし、また翼厚を主翼より薄くして水平尾翼の臨界マッハ数を主翼より大きくして衝撃波の影響を減らす、速度警報装置を備えてピッチアップ発生速度までの速度超過を防ぐ、などがある。

[落合一夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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