ピウス(11世)(読み)ぴうす(英語表記)Pius Ⅺ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピウス(11世)」の意味・わかりやすい解説

ピウス(11世)
ぴうす
Pius Ⅺ
(1857―1939)

ローマ教皇(在位1922~1939)。前名アキッレ・ラッティAchille Ratti。1879年司祭となり、教皇庁図書館館長、ポーランド駐在教皇大使などを歴任枢機卿(すうききょう)およびミラノ大司教を経て教皇に選ばれた。1924年カトリック人民党と他の反ファシスト諸党との協力を禁じ、危機にあったファシズムを間接的に援助。人民党のかわりに「カトリック行動」という大衆団体の再建、強化に努め、海外布教とくに極東における活動に尽力した。ムッソリーニ政府と長期にわたる交渉を行い、1929年イタリア国家との和解ラテラン協定)を実現、1933年にはヒトラーのドイツともコンコルダート政教協約)を結んだ。1936年までファシズム体制に好意的であったが、その後ムッソリーニがナチスから導入した人種理論には批判的であった。また、教皇庁と折り合わないアクシオン・フランセーズナチズムを非難し、とりわけ共産主義には敵対的であった。教皇庁の科学アカデミーを創設した。

[重岡保郎 2017年12月12日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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