ビーズ・スパングル刺しゅう(読み)びーずすぱんぐるししゅう

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ビーズ・スパングル刺しゅう
びーずすぱんぐるししゅう

スパングルは、スパンコールまたはスパンともいい、かつては薄く丸い小さな金属片だったが、現在ではアセチロイドを着色加工したものが主流である。このスパングルとビーズを併用して刺しゅうすることによって、華麗さを強調させる技法がビーズ・スパングル刺しゅうである。芸能人の舞台衣装、室内装飾、広告などにも利用されている。最近ではスパングルの形も多彩になり、丸形のほかに花形、木の葉形、ドーナツ形、勾玉(まがたま)形など、アイデアに富んだものもある。また着色工程において、オパール系のものとメタリック系のものなどがあり、色も白、黒、金、銀、赤、黄と、はでなものから中間色まで出回っている。

 刺し方には、一枚ずつビーズで留めていく方法と、連続的にスパングルの半分を重ね合わせて、線状に留めていく方法とがある。スパングルは非常に軽く、しかも薄いものなので、手のひらにくっついたり、強く呼吸するだけで飛散してしまうから、取り扱いには細心の注意が必要。フェルトなどの布にのせて作業するのがよい。また、湿気と熱に弱いので、アイロンなどは避けたい。

[齋藤五朗]

必要な用具

(1)針 大きいビーズを使用する場合は、容易に明穴(あきあな)に糸が通るが、ビーズバッグ、ドレスなど小さいビーズを使う場合は、イギリス製の細い針、十二番メリケン針、木綿針、かがり針が必要である。(2)糸 三十番、五十番、六十番のカタン糸を明穴の大きさに応じて選ぶ。そのほか木綿糸、フランス刺しゅう糸。(3)コマ 日本刺しゅう用のコマ二つを組み合わせてつくる。あるいは簡易法としてマッチ箱におもりを入れ、布で包んでコマの代用としてもよい。(4)鋏(はさみ)と目打ち 鋏は小形で先端のよく切れるものを選ぶ。目打ちは日本刺しゅう用でもよいし、洋裁用の目打ちでもよい。(5)チャコペーパー、胡粉(ごふん)筆 図案を布に写し描きするとき用いる。(6)タオルと糊(のり) 糸の汚れをとるために、常時ぬれタオルをそばに置く。これは仕上げのとき裏拭(ぶ)きにも必要。糊は仕上げのとき、裏から薄く塗る。

[齋藤五朗]

刺しゅうを始める前に

デザインした図柄をどのような技法で、どんなビーズを選ぶかがまず肝要。ビーズやスパングルには、糸と違ってボリュームがあるので、素材にあったバランスのとれたものを選ぶことがたいせつである。線刺しの場合はビーズをカタン糸に通し替えなければならないし、拾い刺しのときはビーズふとん(15センチメートル角のフェルトの一角を糸で留める)に切りこぼし、準備をすることを忘れてはならない。刺しゅうをする者にとって、図案ができ刺し方が決まれば、すでに作品は半分以上終わったといっていい。

[齋藤五朗]

基礎縫い

(1)パラづけ 針でビーズを一粒ずつ拾って刺す法。一定間隔で刺したり、間隔をだんだん広げたり逆に狭めていく法。(2)半詰め 2、3粒で小さな線にして刺す法。前の直線に逆らいながら刺すこと。(3)総詰め 布地が見えなくなるまで、ビーズで詰めていく法。固くならないよう、また一粒ずつが互いに席を譲り合うように刺すと、面(めん)の肌が柔軟になる。(4)リング刺し ビーズを5、6粒拾い、ビーズの輪をつくってから、針幅を考えて刺す。輪はビーズの数で自由につくられる。(5)拾い線刺し コマにビーズを移し替える必要がないくらいの短い線(5~10センチメートル)を刺すとき、図案の線の長さに必要なビーズを拾い、1、2粒ずつとじていく法。この場合針足はビーズの長さより、こころもち長くする。短いとビーズが途中で窮屈になり、無理が生じる。(6)線刺し コマに巻き取ったビーズを、2、3粒ずつ留めていく法。長い直線や曲線用。(7)線詰め 線刺しの要領で、面を埋めていく法。この場合、糸にたるみができないよう、ピンと張って留めていくこと。角を刺すときは要注意。(8)拾い刺し 1、2粒図案によってその数を決め、その長さをアウトラインステッチの要領で刺す法。斜めの連続横列や縦列、短い線を効果的に利用できる。(9)拾い刺し盛り上げ 針足を短く、ビーズの長さをそれより余分に拾うと、ビーズは盛り上がる。立体感を出す法。また、ふっくらとした盛り上がりを出したいときは、糸で下縫いをして枕(まくら)をつくり(綿などを入れてもよい)、その上にビーズをのせて刺すとよい。(10)スパングル刺しゅう 布地の下から針を出し、ビーズ1粒を拾ってスパングルのもと穴に戻して留める。これを連続して刺す場合は、返し針の要領で布から針を出し、スパングル1枚を拾って、スパングルの半径の長さ分ずつ前進していく。

 以上いずれの方法でも共通してたいせつなことは、用布を刺しゅう台に張るときは布目を曲げないよう、強すぎず弱すぎもしない感じで、ぴんと張ること。またビーズはその組合せによって、おもしろく変えることができるので、その点を配慮して選ぶこと。そして針目は小さく、返し針で確実に刺すこと。糸の緩みもないようにする注意も必要。小さなスパングルは静電気がおきやすく、手にくっつくことが多いのでこれも要注意。

[齋藤五朗]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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