ビンナガ(読み)びんなが(英語表記)albacore

翻訳|albacore

改訂新版 世界大百科事典 「ビンナガ」の意味・わかりやすい解説

ビンナガ (鬢長)
albacore
Thunnus alalunga

スズキ目サバ科の海産魚で,マグロの一種。胸びれが非常に長いことに由来した名称。ビンチョウともいう。胸びれを広げた形からの連想トンボともいわれる。全世界の温暖域に広く生息し,太平洋では赤道から極前線までに分布する。マグロ類中もっとも小型で,最大1.2m,体重30kgにしかならず,クロマグロに次いでやや冷海を好む。体が紡錘形で肥厚し,胸びれがリボン状に著しくのびるのが特徴。80~100cmで成熟し,1尾が200万粒ほどの卵をもつ。産卵期は北太平洋では6~7月,南太平洋では11~12月。成長は遅く,1年目で体長30cm,8年前後で100cmとなる。魚類甲殻類主食とするが,餌生物の組成は生息海域により異なる。浮きはえなわ,引縄,巻網漁獲される。肉は白身で,刺身としては好まれず,もっぱらシーチキンなどと呼ばれて缶詰用に加工される。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビンナガ」の意味・わかりやすい解説

ビンナガ
びんなが / 鬢長
albacore
[学] Thunnus alalunga

硬骨魚綱スズキ目サバ科に属する海水魚。比較的小形のマグロで、最大体長約1.3メートル。成魚の胸びれが著しく長いのが特徴(体長30センチメートル以下のものでは短い)で、ビンチョウ、トンボ(関西地方)の呼称もこれに由来する。温帯性で、各大洋の温帯域に広く分布するが、熱帯海域にはほとんど生息しない。産卵場は亜熱帯海域にあり、幼魚は成長とともに温帯域に回遊し、成魚(体長約90センチメートル、5歳)になるまで温帯域にすむ。北太平洋では日本近海と北アメリカ沿海の間を季節的な東西回遊を行う。夏季は竿(さお)釣り漁業の対象にもなり、延縄(はえなわ)では周年漁獲される。肉は淡紅色で柔らかく、おもに缶詰に利用されてきたが、1990年代以降に刺身、すし種(だね)需要が広まった。

[上柳昭治・小倉未基]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ビンナガ」の意味・わかりやすい解説

ビンナガ

サバ科の魚。地方名ビンチョウ,トンボ,コビンなど。小型のマグロで全長1.2mほど。胸びれが長い。世界中の暖海に分布する。日本では春〜夏に北上して東北付近に達し,秋〜冬に南下する。日本海には少ない。近海では一本釣りや延縄(はえなわ)で,遠洋では延縄で漁獲。肉色に赤みが少なく,かつてはすしにはほとんど使われなかった。油漬缶詰などにして食用にされ米国にも輸出される。
→関連項目マグロ(鮪)

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビンナガ」の意味・わかりやすい解説

ビンナガ
Thunnus alalunga

スズキ目サバ科の海水魚。全長 1m内外の小型のマグロ。体は紡錘形で,背面は暗青色,腹面は白色。胸鰭が非常に長く,第2背鰭の位置より後方にまで達する。群れをつくって外洋の中層で生活する。世界の暖海に分布する。おもに缶詰用とされる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「ビンナガ」の解説

ビンナガ

 →ビンナガマグロ

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のビンナガの言及

【マグロ(鮪)】より

…日本ではふつうマグロとは大型のサバ型魚類で刺身として生食に供されるものを指すことが多く,このためカジキ類をもカジキマグロと称することがある。分類学上のマグロ属はビンナガ(ビンチョウ)Thunnus alalunga(英名albacore)(イラスト),クロマグロ(ホンマグロ,シビ,ハツ)T.thynnus(英名bluefin tuna)(イラスト),ミナミマグロ(豪州マグロ)T.maccoyii(英名southern bluefin tuna),メバチT.obesus(英名bigeye tuna),キハダ(キワダ)T.albacares(英名yellowfin tuna)(イラスト),タイセイヨウマグロT.atlanticus(英名blackfin tuna),コシナガT.tonggol(英名longtail tuna)の7種を含む。このうち,ビンナガ,メバチ,キハダの3種は世界の熱帯から温帯にかけての広い範囲に生息する。…

【マグロ(鮪)】より

…日本ではふつうマグロとは大型のサバ型魚類で刺身として生食に供されるものを指すことが多く,このためカジキ類をもカジキマグロと称することがある。分類学上のマグロ属はビンナガ(ビンチョウ)Thunnus alalunga(英名albacore)(イラスト),クロマグロ(ホンマグロ,シビ,ハツ)T.thynnus(英名bluefin tuna)(イラスト),ミナミマグロ(豪州マグロ)T.maccoyii(英名southern bluefin tuna),メバチT.obesus(英名bigeye tuna),キハダ(キワダ)T.albacares(英名yellowfin tuna)(イラスト),タイセイヨウマグロT.atlanticus(英名blackfin tuna),コシナガT.tonggol(英名longtail tuna)の7種を含む。このうち,ビンナガ,メバチ,キハダの3種は世界の熱帯から温帯にかけての広い範囲に生息する。…

【マグロ(鮪)】より

…日本ではふつうマグロとは大型のサバ型魚類で刺身として生食に供されるものを指すことが多く,このためカジキ類をもカジキマグロと称することがある。分類学上のマグロ属はビンナガ(ビンチョウ)Thunnus alalunga(英名albacore)(イラスト),クロマグロ(ホンマグロ,シビ,ハツ)T.thynnus(英名bluefin tuna)(イラスト),ミナミマグロ(豪州マグロ)T.maccoyii(英名southern bluefin tuna),メバチT.obesus(英名bigeye tuna),キハダ(キワダ)T.albacares(英名yellowfin tuna)(イラスト),タイセイヨウマグロT.atlanticus(英名blackfin tuna),コシナガT.tonggol(英名longtail tuna)の7種を含む。このうち,ビンナガ,メバチ,キハダの3種は世界の熱帯から温帯にかけての広い範囲に生息する。…

※「ビンナガ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android