日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ビノグラドフ(Viktor Vladimirovich Vinogradov)
びのぐらどふ
Виктор Владимирович Виноградов/Viktor Vladimirovich Vinogradov
(1894/1895―1969)
ロシアの言語学者、ロシア語学者、文学研究者。モスクワ大学教授のほか、言語学研究所や科学アカデミー・ロシア語研究所の所長、『言語学の諸問題』誌編集長など、多くの要職を務めた。ことに1950年のスターリンによるマール主義批判以降はつねに言語学界の指導者的地位を占め、ソ連時代ロシアの言語学、ロシア語学に及ぼした影響には甚大なものがある。1920年代は、ロシア・フォルマリズム運動にかかわり、ゴーゴリ、ドストエフスキーらに関する文体論研究を発表。その後もプーシキンをはじめ、レールモントフ、トルストイら個々の作家の言語、文体を分析した著書や、『芸術的散文について』(1930)、『文学の言語について』(1959)など文学一般の言語、文体の研究を数多く刊行している。
言語学の分野の著作も、ロシア語の文法、語形成、語彙(ごい)、語史に関するものを中心にきわめて多く、なかでも『ロシア語――語に関する文法学説』(1947)、『17~19世紀ロシア語史概説』(1934)は代表作にあげられる。また、ソ連時代に入ってからの大部の辞書の編纂(へんさん)には、ほぼすべて関与した。
[桑野 隆 2018年7月20日]