ヒロハシサギ(読み)ひろはしさぎ(英語表記)boat-billed heron

改訂新版 世界大百科事典 「ヒロハシサギ」の意味・わかりやすい解説

ヒロハシサギ (広嘴鷺)
boat-billed heron
Cochlearius cochlearius

コウノトリ目サギ科の鳥。全長約50cm。一見ゴイサギに似ているが,大きく幅の広いくちばしが特徴。額,顔,くびは白く,頭上冠羽後頸こうけい)は黒い。背以下の背面は灰色,胸以下の下面は栗色で,わき黒色である。幼鳥は赤褐色に富む。メキシコからアルゼンチン北部まで分布し,川岸潟湖のよく茂ったマングローブ林などにすんでいる。習性は夜行性で,昼間はふつう休み,夕方出て,湿地水辺で餌をあさる。食物は主として小エビ,小魚,水生昆虫である。他のサギ類と同様に,繁殖期には水辺の林に集まり,集団で営巣する。巣は樹上小枝を雑に積み重ねてつくり,ゴイサギの巣によく似ている。卵もゴイサギの卵のように淡青緑色で,1腹2~4個を産む。抱卵期間は19~21日。抱卵,育雛(いくすう)は両親が交替でする。夜間ゴイサギに似た声でときどきクワァッと鳴く。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒロハシサギ」の意味・わかりやすい解説

ヒロハシサギ
ひろはしさぎ / 広嘴鷺
boat-billed heron
[学] Cochlearius cochlearius

鳥綱コウノトリ目サギ科の鳥。全長約50センチメートル。一見ゴイサギに似ているが、スプーン状の幅広い嘴(くちばし)が特徴である。頭上、冠羽、後頸(こうけい)、わきは黒く、額、顔、頸(くび)は白色ないしクリーム色。背以下の背面は灰色、腹は栗(くり)色をしている。メキシコからアルゼンチン北部まで分布し、マングローブ林などにすんでいる。習性は夜行性で、昼間はマングローブ林で休み、夕方から夜にかけて湿地や川辺に出て小魚、水生昆虫、小エビなどをあさる。繁殖は集団で行い、小枝を雑に組み合わせた皿形の巣を樹上にかける。1腹の卵は2~4個、抱卵期間は約20日。動物園などでまれに飼われている。

[森岡弘之]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒロハシサギ」の意味・わかりやすい解説

ヒロハシサギ
Cochlearius cochlearius; boat-billed heron

ペリカン目サギ科。全長 46~54cm。背面は灰色,頭上は青黒色で,冠羽(→羽冠)があり,は長さが約 7.5cm,幅が 5cmもある平たく独特な形をしている。腹は赤褐色を帯びる。メキシコからアルゼンチン北部まで分布する。日中は沼沢地のマングローブで群れになって休み,夕方からは単独で活動する夜行性で,ミミズ,魚類,甲殻類,両生類,小型哺乳類などを食べる。小枝を使って木の上にゴイサギのものに似た巣をつくる。

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