ヒラタビル(読み)ひらたびる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒラタビル」の意味・わかりやすい解説

ヒラタビル
ひらたびる / 平田蛭
[学] Glossiphonia complanata

環形動物門ヒル綱吻(ふん)ビル目グロシフォニ科に属する淡水産動物。日本一円に分布し、池、沼、川などにすむ。体長15~20ミリ、幅5~8ミリの長卵形で、前端はとがる。背腹に扁平(へんぺい)。背面は緑色ないし茶色の地に二列の黒褐色の斑点(はんてん)が縦に並んでいる。腹面は淡色。体中部では一体節に三体環がある。目は三対あって、縦二列に並ぶ。環帯は九体環からなり、卵嚢(らんのう)を分泌する環帯腺(かんたいせん)が環帯全域に開口している。胃側盲嚢(もうのう)は六対あり、各盲嚢の先端はすこしくぼんで複雑になっている。雌雄同体で、雄生殖口は第11と第12体節の間、雌生殖口は第12体節に開く。精巣嚢は10対あり、第12体節より後方の神経索の両側に胃側盲嚢と交互に配列している。生殖時期は春で、2個体が互いに前吸盤で相手の背部に固着し、雄生殖口を相手の背中に密着させて精包を移す。精包から精子が出て、体腔(たいこう)を通り卵巣に達する。初夏にかけて水中の石などに卵嚢を産み付け、親はその上を覆って保護する。多くの個体は2年間生存し、一生に2回成熟、産卵するが、ときに3~4年生きるものもある。淡水貝類の体液を吸うが、ときに軟体部までも吸い取る。硬質の水域に優占する。

[今島 実]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android