ヒョウモンダコ(読み)ひょうもんだこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒョウモンダコ」の意味・わかりやすい解説

ヒョウモンダコ
ひょうもんだこ / 豹紋蛸
[学] Hapalochlaena maculosa

軟体動物門頭足綱マダコ科のタコ相模(さがみ)湾、八丈島以南、広く太平洋インド洋、オーストラリア、タスマニア島にまで分布する。体長12センチメートル、外套(がいとう)(胴)長3.5センチメートルぐらいに達する。皮膚の表面はややざらざらしていて、目の上には棘(とげ)がある。地肌の色は黄色ないし橙(だいだい)色で、胴部に4縦列、腕に8~9黄帯の黒い模様があり、黒の中心部にコバルト色の輪状紋があって、色彩が毒々しい。本種の咬毒(こうどく)は強く、かまれると嘔吐(おうと)、けいれんをおこし、まれに死ぬことがある。このヒョウモンダコ属の種には、普通のタコと違って墨汁嚢(のう)がない。

[奥谷喬司]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵mini 「ヒョウモンダコ」の解説

ヒョウモンダコ

体長12センチメートルほどのタコの一種。漢字表記は「豹紋蛸」。太平洋やインド洋の温かく浅い海に生息する。普段の体色は黄土色から茶褐色で、刺激を受けると鮮やかな青く丸い斑紋が多数浮かぶ。唾液腺(だえきせん)からフグと同じ猛毒(テトロドトキシン)を分泌し、生物を麻痺(まひ)させて捕食する。人が噛まれると嘔吐(おうと)・痙攣(けいれん)などを起こし、呼吸困難に至って死亡することもある。日本では八丈島以南に生息するとされていたが、これまで見られなかった日本海側の若狭湾沿岸でも2015年より相次いで捕獲されるようになった。

(2016-2-24)

ヒョウモンダコ

マダコ亜目マダコ科ヒョウモンダコ属に属する4種類のタコの総称。体長10センチメートル程度で、青いリングの模様があり、熱帯亜熱帯に分布している。唾液にはフグと同じ神経毒の「テトロドトキシン」が含まれることが知られており、かまれると呼吸困難などを引き起こす可能性があり危険である。和歌山など温暖な太平洋側では確認されてきたが、温暖化の影響からか近年は日本海側でも捕獲されている。

(2016-3-18)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒョウモンダコ」の意味・わかりやすい解説

ヒョウモンダコ
Hapalochlaena fasciata; blue lined octopus

軟体動物門頭足綱マダコ科。体長 12cm,胴長 3.5cm,胴幅 2.5cm。小型のタコで灰橙色。外套上に4縦帯,腕に8~9横帯がある。これらは暗褐色の中に紺色の中心部または環があり美しい。腕長は体長の 70%を占め,第3腕が最も長い。墨汁嚢は小さく肝臓に埋没している。唾液腺は猛毒で,人が咬まれると嘔吐をしたり,手足のしびれを起し,ときに死亡する。インド洋,太平洋の温帯,熱帯に広く分布し,房総半島以南の浅海にもすむ。

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世界大百科事典(旧版)内のヒョウモンダコの言及

【タコ(蛸∥章魚)】より

… 餌はおもに甲殻類であるが,他の軟体類(貝類)なども好む。タコの唾液腺にはこれらの餌を殺す,チラミンtyramineなどの毒を含み,なかでも熱帯太平洋に分布するヒョウモンダコは毒性が強い。人を攻撃することはないが,ときにはいたずらをしていてかまれた人が死ぬことがある。…

【テトロドトキシン】より

…テトロドトキシンの特異的な拮抗薬はまだ知られていない。テトロドトキシンの存在はフグだけに限らず,最近ではカリフォルニアイモリTaricha torosa,ツムギハゼGobius criniger(奄美大島以南産の毒ハゼ),ヒョウモンダコOctopus maculosus(オーストラリア沿岸産)などにもあることが知られている。【粕谷 豊】。…

※「ヒョウモンダコ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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