ヒビミドロ(英語表記)Ulothrix flacca (Dillw.) Thuret

改訂新版 世界大百科事典 「ヒビミドロ」の意味・わかりやすい解説

ヒビミドロ
Ulothrix flacca (Dillw.) Thuret

日本各地の沿岸,とくに冬季に内湾の高潮線付近の岩上や杭などによく生育する,緑色の短い毛髪状の海藻。緑藻綱ヒビミドロ科に所属する。体は1列の細胞糸からなり,太さ10~25μm,細胞内には1個の核と1個の環帯状の葉緑体がある。海水温度が低い冬季は,主として無性的に遊走子をつくって生殖するが,温度が上昇する春季になると,雌雄の配偶子をつくって有性生殖を行う。接合子は単細胞のままで夏を越し,秋に内部に遊走子を形成する。遊走子は泳ぎ出た後に基物について発芽し,糸状の藻体となる。アサクサノリ養殖の時期に遊走子の形成と放出が起こり,養殖用のひびによくついて生育することからヒビミドロの和名がついた。近縁種が数種あるが,体制が単純であるため種の分類は容易でない。淡水産の種類も少数あり,日本では河川の岩上などに生育するカワヒビミドロU.zonata (Weber et Mohr) Kütz.とU.tenuissima Kütz.が知られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒビミドロ」の意味・わかりやすい解説

ヒビミドロ
ひびみどろ
[学] Ulothrix

緑色植物緑藻類の1属の総称山間渓流などに着生する淡水藻で、円筒形の細胞がつながって長い糸状となり、中に板状の葉緑体が入っている。和名の由来は、手にとると、手にひびが入ったようにみえることによる。

小林 弘]

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