ヒゲナガガ(読み)ひげながが(英語表記)long-horned moth

改訂新版 世界大百科事典 「ヒゲナガガ」の意味・わかりやすい解説

ヒゲナガガ (髭長蛾)

鱗翅目マガリガ科ヒゲナガガ亜科Adelinaeの昆虫総称マガリガ科は翅の開張10~23mmの小型のガを含む科で,世界中に分布する。日本からは30種あまりが記録されている。この科の中で,雄の触角前翅の長さよりはるかに長く,鱗翅目の中で最長一群であるが,以前はこの亜科を独立の科とする学者が多かった。日本産は25種知られ,前翅に赤色や黄色の斑紋をもったり,金属光沢に輝くなど,はでな姿をした種類が多い。昼飛性で,陽光の下で数匹の雄が上下に群飛するが,雌がまざることもあり,また葉上や花上に翅をたたみ,長い触角を逆八の字に広げて静止することがある。種によっては薄暮に活動する。幼虫は葉の破片などを糸でつづって小さなケースをつくってその中にすみ,成長するにつれてケースを大きくしていき,老熟するとケースの一端を他物に固着させて蛹化(ようか)する。日本で生活史のわかっているのはギンヒゲナガだけで,初齢幼虫はヤマヤナギ子房内にすむ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒゲナガガ」の意味・わかりやすい解説

ヒゲナガガ
ひげながが / 鬚長蛾
long-horned moth

昆虫綱鱗翅(りんし)目マガリガ科の一亜科Incurvariidaeの総称。かつての分類では独立の科とされていたが、最近ではマガリガ科をマガリガ亜科とヒゲナガガ亜科に分類する学者が多い。小形のガで、はねは細長く、触角はマガリガでは前翅長より短いが、ヒゲナガガでははるかに長く、ことに雄の触角は鱗翅目のなかでもっとも長い。前翅は金属光沢に輝く種が多く、昼飛性で、雄は陽光の下で群飛し、上下に特異な飛び方をし、花によく集まる。幼虫は腹脚がほとんど退化し、初期には広葉樹針葉樹の葉や子房内にすんで内容物を食べるが、のちに地上に落ちて扁平(へんぺい)なポータブルケースをつくり、枯れ葉を食べて成長する。老熟すると摂食をやめてケースの一端を他物に固定し、やがて蛹化(ようか)し、越冬する。成虫が羽化するのは翌年の春か初夏である。ほとんど全世界に分布し、日本産として知られているのは26種であるが、未発見種がかなり残っていると推定される。

[井上 寛]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒゲナガガ」の意味・わかりやすい解説

ヒゲナガガ
Adelidae; long-horned moth

鱗翅目ヒゲナガガ科の昆虫の総称。触角の長い小型のガで,日中,草や木の上などをひらひら飛ぶ。雄の触角は前翅長の3倍をこす種もあり,また,基部半分が鱗毛でおおわれ太く見える種もある。雌の触角は短いが,前翅長よりは長い。成虫は前翅開張幅 20mm内外で,前翅は昼飛性の例に漏れず,金属光沢があり,色彩にも富み,きれいな種が多い。口吻がよく発達し,訪花して盛んに吸蜜する。卵は花の子房に産みつけ,1齢幼虫はその中で育つ。その後地上に落ちて袋状の蓑をつくり,枯れ葉を食べて成長する。幼虫は円筒形で,普通のガの幼虫より腹脚が1対多い。ゴマフヒゲナガガ Nemophora raddeiは早春,ヤナギの花上を飛び回り,日本各地に分布する。

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百科事典マイペディア 「ヒゲナガガ」の意味・わかりやすい解説

ヒゲナガガ

鱗翅(りんし)目マガリガ科ヒゲナガガ亜科の総称。微小なガで,多くは開張20mm以下。美しい模様の種類が多く,どれも触角が著しく長い。幼虫は植物の葉を食べ,成虫は昼行性で花に集まり,植物の陰で特有の上下に踊るような飛び方をする。日本にはギンスジヒゲナガなど約25種。

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