ヒカリモ(読み)ひかりも

改訂新版 世界大百科事典 「ヒカリモ」の意味・わかりやすい解説

ヒカリモ (光藻)
Chromulina rosanoffii (Wor.) Bütscheli

池沼,井戸または洞窟内の水たまりなどに生育する,単細胞遊泳性の黄金色藻綱の1種。動物学では,原生動物門有色鞭毛虫綱黄緑鞭毛虫目に属する。おもに春から秋に,短い柄をもつ球形細胞となって水面に浮上して群生し,細胞内の杯状の葉緑体により,入射光を反射して水面を光らせる。遊泳細胞は卵形,長さ8~9μm,幅4~6μmで,斜め前方に生ずる1本の鞭毛で泳ぐ。葉緑体は1個で,大きく,眼点はない。電子顕微鏡の観察により,後方にのびるはずの鞭毛は退化して痕跡的となり,細胞外に突出していないことがわかった。水面に浮く球形の包囊は直径約3.5~8μmである。近縁の種類数が多く,全世界で約120種が記載され,主として眼点やピレノイドの有無,葉緑体の形と数,および包囊の構造の違いなどで区別される。しかし,日本では研究が十分ではなく,ヒカリモのほかにコガネイロヒゲムシ,ホソコガネイロヒゲムシが知られるにすぎない。千葉県富津市の竹岡の弁天窟はヒカリモ発生地として国の天然記念物に指定されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒカリモ」の意味・わかりやすい解説

ヒカリモ
ひかりも / 光藻
[学] Chromulina rosanoffii (Wor.) Buet.

黄色植物、黄金藻類ヒカリモ属の1種。この属は淡水産で種類も多いが、金色に光るのはこのヒカリモのみである。普通は、アメーバ状の体の一端に1本の鞭毛(べんもう)をもち、遊泳生活をしているが、洞窟(どうくつ)内の水たまりや温室内の水槽など、波立ちのない止水中では浮上して鞭毛を失い、球形に変わって水面上に被膜をつくる。これに光が当たると、黄色レンズ状の葉緑体が光を反射して光ってみえる。千葉県富津(ふっつ)市のヒカリモ発生地は国の天然記念物に指定されている。

小林 弘]

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世界大百科事典(旧版)内のヒカリモの言及

【淡水藻】より

…現在,地球上には約3万種の藻類が知られ,淡水藻と海産藻類がそれぞれほぼ1/2をしめる。グループとして陸水にのみ生育する藻類は車軸藻類だけで,グループ全体の80~90%またはそれ以上の種類が陸水産である藻類は,緑藻類,ミドリムシ藻類,黄金色藻類(ヒカリモ類),黄緑藻類(不等毛類)などである。これとは逆に,海に多く生育する仲間は,紅藻類,褐藻類,ハプト藻類,渦鞭毛藻類などである。…

※「ヒカリモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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