ヒイラギ(常緑小高木)(読み)ひいらぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒイラギ(常緑小高木)」の意味・わかりやすい解説

ヒイラギ(常緑小高木)
ひいらぎ / 疼木

[学] Osmanthus heterophyllus (G.Don) P.S.Green

モクセイ科(APG分類:モクセイ科)の常緑小高木。高さ5~10メートル。葉は対生し、卵形から長楕円(ちょうだえん)形で長さ3~5センチメートル、厚い革質で表面は光沢があり、縁(へり)に先が刺(とげ)状の鋸歯(きょし)が2~5対ある。老木になると鋸歯のない葉が多くなる。雌雄異株。10~11月、葉の腋(えき)に芳香のある小さな白色花を開く。花冠は深く4裂し、雄花には雄しべが2本あり、両性花では雌しべが発達している。果実は楕円形の核果で長さ1.2~1.5センチメートル。翌年の5~6月、紫黒色に成熟する。山地に生え、福島県以西の本州、四国に多く、九州、西表(いりおもて)島、および台湾の高地にも分布する。園芸品種が多く、ヒトツバヒイラギ小木で、全縁の葉がつく。マルバヒイラギは葉が円状、キッコウヒイラギは葉が亀甲(きっこう)状である。フイリヒイラギは葉面に白斑(はくはん)があり、そのほかフクリンヒイラギ、キフクリンヒイラギ、オウゴンヒイラギなどがある。

 ヒイラギとギンモクセイの雑種といわれるヒイラギモクセイO. ×fortunei Carr.は、葉は大形で縁に鋸歯が多い。庭木生け垣盆栽とし、材は木目(もくめ)が密で堅いので、楽器、彫刻、器具材などにする。

[小林義雄 2021年7月16日]

民俗

ヒイラギの名は、葉に鋭い刺があり、触れるとずきずきするから疼(ひいら)ぐ木の意味であり、柊は日本でつくった和字で、初冬に花を開く木の意味である。節分に、イワシの頭をつけたヒイラギの枝葉戸口門口に挿して、邪鬼を防ぐ風習があり、オニノメツキ、オニオドシなどの方言もある。

[小林義雄 2021年7月16日]

文化史

ヒイラギの名は『古事記』に、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の際、ヒイラギの八尋矛(やひろほこ)を賜ったと初見する。これはヒイラギ製ではなく、矛の形がヒイラギであったとする見方もある。ヒイラギを厄除(やくよ)けに使う風習は平安時代からあり、紀貫之(きのつらゆき)は『土佐日記』の元日に「今日は都のみぞ思ひやらるる、小家の門の端出之縄(しりしめなわ)、なよしの頭、ひひらぎ等(など)いかにぞと言ひあへなよ」と書いた。その後、この風習は2月の節分に移る。ヒイラギを節分に飾るのは、鬼の目を突き退散させるためとされるが、鋸歯(きょし)のないトベラの葉も同様に使われ、平安時代に正月の習俗であったこととあわせると、中国の爆竹と同じく、葉を火にくべてはぜる音で鬼払いしたのが原型と考えられる。

 ヒイラギモチモチノキ科で、葉が互生し類縁が遠いが、ヨーロッパでは儀式植物である。現在はクリスマスに使われるが、本来は赤い実が魔除けに、中北部のヨーロッパでは数少ない常緑の広葉が冬至(とうじ)儀式に使われた名残(なごり)とされる。

 ヒイラギの園芸品種は少ないが、江戸時代の『草木奇品家雅見(きひんかがみ)』(1827)には、斑(ふ)入りが7品種あがる。

[湯浅浩史 2021年7月16日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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