パーキン反応(読み)ぱーきんはんのう(英語表記)Perkin reaction

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パーキン反応」の意味・わかりやすい解説

パーキン反応
ぱーきんはんのう
Perkin reaction

芳香族アルデヒドと脂肪酸無水物とを、脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩の存在下に加熱すると、ケイ皮酸誘導体が得られる反応である。合成染料の最初の発明者であるイギリスのW・H・パーキンは、1868年サリチルアルデヒド無水酢酸から香料クマリンができることを発見し(初めての合成香料)、その後ベンズアルデヒドと無水酢酸からケイ皮酸合成して、この反応を一般化した。


 脂肪族アルデヒドでは副反応がおこるので、この反応の応用芳香族アルデヒドに限られる。脂肪酸としては酢酸以外にα(アルファ)-位がメチレン基であればよく、アルデヒドとの縮合はこのα位置でおこる。有機合成に重要な反応である。

[湯川泰秀・廣田 穰 2015年3月19日]

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改訂新版 世界大百科事典 「パーキン反応」の意味・わかりやすい解説

パーキン反応 (パーキンはんのう)
Perkin reaction

芳香族アルデヒドと酸無水物のアルドール縮合により,α,β-不飽和カルボン酸を合成する反応。この反応には酸無水物に対応するカルボン酸塩を触媒として用いる。1868年ドイツの有機化学者W.H.パーキンによって見いだされた。たとえば式に示すように,ベンズアルデヒドC6H5CHOを酢酸カリウムCH3CO2Kの存在下で無水酢酸(CH3CO)2Oと反応させ,中間生成物加水分解すると収率60%でケイ皮酸C6H5CH=CHCO2Hが得られる。

反応には加熱が必要である。工業的にはケイ皮酸誘導体の合成に使われている。
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化学辞典 第2版 「パーキン反応」の解説

パーキン反応
パーキンハンノウ
Perkin reaction

芳香族アルデヒドと脂肪酸無水物およびその酸のアルカリ塩の作用により,芳香族α,β-不飽和カルボン酸(ケイ皮酸またはその誘導体)を生成する反応.パーキン縮合ともいう.

イギリスの化学者W.H. Perkin(パーキン)によって発見され,かれはこの反応を使ってクマリンをつくり,天然香料の合成に先べんをつけた.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パーキン反応」の意味・わかりやすい解説

パーキン反応
パーキンはんのう
Perkin reaction

芳香族アルデヒドに無水酢酸と酢酸ナトリウムを作用させてケイ皮酸を合成する反応。酢酸の代りに一般の脂肪酸を使うとケイ皮酸誘導体が得られる。また,酸無水物の代りにエステルを用いると広義のクライゼン縮合になる。

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世界大百科事典(旧版)内のパーキン反応の言及

【パーキン】より

…57年ロンドン近くのグリーンフォード・グリーンに工場を設け,石炭からとれるアニリンを使用して,モーブの工業的生産に成功した。68年芳香族不飽和酸を生成するパーキン反応を発見し,香料クマリンを合成,69年アリザリンの安い製造法の開発など,工業界で活躍した。74年引退後は再び化学研究にもどり,化合物の構造と磁場旋光の関係について報告した。…

【無水酢酸】より

また塩化アルミニウムを触媒にしてベンゼンと反応させるとアセトフェノンが得られる(フリーデル=クラフツ反応)。酢酸ナトリウムの存在下にベンズアルデヒドと反応させるとケイ皮酸を生じる(パーキン反応)。(化学式)製法としては種々の方法が知られているが,(1)酢酸の蒸気を熱分解して得られるケテンと酢酸との反応,(2)アセトアルデヒドの自動空気酸化,(3)塩化アルミニウムを触媒とする酢酸とホスゲンの反応,(4)アセチレンと酢酸の反応で得られるエチリデンアセテートのルイス酸触媒分解などで製造されている。…

※「パーキン反応」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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