パブロフ(読み)ぱぶろふ(英語表記)Иван Петрович Павлов/Ivan Petrovich Pavlov

精選版 日本国語大辞典 「パブロフ」の意味・読み・例文・類語

パブロフ

(Ivan Pjetrovič Pavlov イワン=ペトロビチ━) ロシア生理学者。犬を手術して消化腺に通じる瘻管(ろうかん)を作り、消化生理を研究。さらに条件反射実験・研究を続け、大脳生理学の分野を開拓した。一九〇四年ノーベル生理学・医学賞受賞。(一八四九‐一九三六

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デジタル大辞泉 「パブロフ」の意味・読み・例文・類語

パブロフ(Ivan Petrovich Pavlov)

[1849~1936]ロシアの生理学者。犬を手術して消化腺に通じる瘻管ろうかんを作り、消化生理を研究。さらに条件反射の実験・研究を続け、大脳の生理機能の究明に貢献した。1904年ノーベル生理学医学賞受賞。著「条件反射研究の二〇年」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パブロフ」の意味・わかりやすい解説

パブロフ
ぱぶろふ
Иван Петрович Павлов/Ivan Petrovich Pavlov
(1849―1936)

ロシアの生理学者。9月14日、中央ロシアのリャザニの牧師の子に生まれる。教会で教育を受けたのち、ペテルブルグ大学で学び、1875年陸軍軍医学校に入り医学を学んだ。かたわら獣医学研究所生理学研究室で助手として働き、ついで1878年ボトキンСергей Петрович Боткин/Sergey Petrovich Botkin(1832―1889)の臨床研究室で主任格として生理学研究に従事した。1879年、金メダルを受賞して卒業、ただちに2年間の奨学金を得て、引き続きボトキンの研究室で、血液循環、消化、薬理学的研究を行った。そしてこの間にブレスラウ大学の生理学教授ハイデンハインRudolf Heidenhain(1834―1897)のもとで2年間、続いて1884年から1886年はライプツィヒ大学生理学教授ルートウィヒに師事した。1890年軍医学校の薬理学教授に任命され、1895年同校生理学教授となり、以後30年間生理学教室を主宰し、1924年辞任した。この間1891年に実験医学研究所が新設され、その生理学研究部門の主任に迎えられ、現職を兼務し、このほうは生涯を終えるまで45年間務めた。

 彼の輝かしい業績は消化腺(せん)および条件反射の研究である。ハイデンハインの小胃法を改良し、神経無傷の小胃法を考案し、純粋胃液の採集を可能にした。この方法で、小胃(胃瘻(ろう))、食道瘻、耳下腺瘻(せんろう)、膵瘻(すいろう)を作成し、無条件(先天性)反射および条件(後天性)反射性の消化液分泌の研究を行い、条件反射学を創始、発展させた。この条件反射の研究は、大脳の生理機能を研究するうえで重要な手段として貢献した。1889年以来次々と業績を発表、消化腺に関する初期の著名な論文として『神経支配のある小胃法』(1894)、『胃および食道瘻による純粋胃液の採集』(1895)、『嗅覚(きゅうかく)は胃液分泌を引き起こす』(1898)などがあり、1904年「消化の生理に関する研究」でノーベル医学生理学賞を授与された。代表的著書として『条件反射学講義』(1928)、『大脳両半球の働きについての講義』(1927)、『条件反射研究の20年』(1932)などがあり、各国語に翻訳されている。

 パブロフのもとには世界各国からの入門者が相次ぎ、スペランスキーをはじめ多くの俊英が輩出した。また招かれて、イギリスフランススイスなど各地で条件反射や大脳生理に関する講演を行った。1936年2月27日レニングラード(サンクト・ペテルブルグ)で死去。

[中山 沃]

『林髞訳『条件反射学』全3冊(新潮文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「パブロフ」の意味・わかりやすい解説

パブロフ
Ivan Petrovich Pavlov
生没年:1849-1936

ロシアの生理学者。中部ロシアのリャザンで司祭の子として生まれた。1870年,ペテルブルグ大学に入学,ツィオンI.F.Tsionの指導のもとに生理学を志し,在学中に膵臓神経の研究に対して金賞を授けられた。卒業後,軍医学校に入学,79年に医師免許を獲得した後,ライプチヒのK.ルートウィヒ,ブレスラウのR.ハイデンハインについて,生理学の研究を行った。86年帰国,ボトキンS.P.Botkinの研究所に入り,90年には軍医学校の薬理学教授となる。この間,血液循環の生理についての研究が中心であったが,消化の生理学的研究に移り,消化腺の研究や膵臓分泌神経の発見(1888)などの業績をあげた。95年,軍医学校の生理学教授となり,大脳や高次神経の研究に着手し,1902年からは条件反射についての研究を行い,有名なイヌを使った条件反射の実験を行った。パブロフの基本的な態度は,精神現象を生理学的な法則で統一しようというものであり,その意味でワトソンらの行動主義心理学に大きな影響を与えた。04年,消化腺の研究に対して,生理学者として初めてノーベル生理学・医学賞が与えられた。07年には科学アカデミー会員となった。
条件反射
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パブロフ」の意味・わかりやすい解説

パブロフ
Pavlov, Ivan Petrovich

[生]1849.9.14. リャザン
[没]1936.2.27. レニングラード
ソビエト連邦の生理学者。条件反射研究の創始者。 1870年,ペテルブルグ大学で自然科学を学び,1879年陸軍軍医学校を卒業,ドイツに留学。帰国後,同医学校の薬理学教授,1895年には生理学教授となる。消化管の生理学的研究で 1904年ノーベル生理学・医学賞受賞。 1902年頃から始められた条件反射の研究は画期的な実験方法で,より自然な状態で動物の生理を観察できることから,客観的な科学的心理学に強い影響を与え,特にアメリカの行動心理学に基盤を提供した。またイヌの実験神経症形成の手法の発見は,人間の精神障害の科学的研究にも貢献した。主著『大脳半球の働きについての講義』 Lektsii o rabote bol'shikh polusharii golovnogo mozga (1927) ,『条件反射による動物高次神経活動 (行動) の客観的研究の 20年』 Dvadtsatiletnii opyt obektivnogo izucheniya vysshei nervnoi deyatel'nosti (povedeniya) zhivotnykh uslovnye refleksy (1932) 。

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百科事典マイペディア 「パブロフ」の意味・わかりやすい解説

パブロフ

ロシア,ソ連の生理学者。ペテルブルグ大学を卒業後,ドイツに留学,実験技術などを学ぶ。軍医学校の薬理学教授,パブロフ生理学研究所長。消化液分泌の神経支配を解明した業績に対し,1904年ノーベル生理医学賞。さらにイヌを使って条件反射を研究,精神現象を生理学的に把握しようという態度は,後のワトソンらの行動主義心理学に大きな影響を与えた。
→関連項目ワトソン

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