パトリック・モディアノ(読み)ぱとりっく・もでぃあの

知恵蔵 「パトリック・モディアノ」の解説

パトリック・モディアノ

フランスの小説家。1945年7月30日生まれ、パリ近郊のオードセーヌ県ブローニュ=ビヤンクール出身。「モディアノ中毒」という言葉があるほど、フランスで最も読まれている人気作家。2014年のノーベル文学賞を受賞。ノーベル賞の受賞理由は「記憶を扱う芸術的手法によって、最もつかみ難い種類の人間の運命について思い起こさせ、占領下の生活、世界観を掘り起こした」とされた。
ナチス・ドイツの占領下にあったパリで出会ったユダヤ系イタリア人の父と、ベルギー人の母の間に生まれる。ソルボンヌ大学を中退後、創作活動に専念し、1968年に『エトワール広場』で文壇デビュー。父や自己のアイデンティティー模索という奥深いテーマを簡潔明瞭な文章によって表現する作風が高い評価を受け、72年に『パリ環状通り』でアカデミー・フランセーズ大賞を受賞したほか、78年には『暗いブティック通り』で、フランスで最も権威のある文学賞の一つであるゴンクール賞を受賞。74年には『ルシアンの青春』がルイ・マル監督により、94年には『悲しみのビラ』がパトリス・ルコント監督により『イヴォンヌの香り』というタイトルで、映画化された。
小説のバックボーンとなるのはユダヤ人問題で、モディアノ自身、ユダヤ系作家を掲げている。翻訳された作品も多い。

(城島充 フリーライター/2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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