日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
バード(William Byrd)
ばーど
William Byrd
(1543―1623)
イギリスの作曲家、オルガン奏者。エリザベス朝最大の音楽家で、その創作活動はカトリックおよびイギリス国教会のための宗教音楽、マドリガル、コンソート伴奏付き歌曲、室内楽、バージナル音楽、オルガン音楽と当時の音楽すべてのジャンルに及ぶ。リンカンに生まれ、少年時代に王室礼拝堂少年聖歌隊員として教育を受けたのち、1563年リンカン大聖堂のオルガン奏者となる。70年王室礼拝堂のメンバー、72年同オルガン奏者。75年楽譜および五線紙出版の特許を得て自作15曲を含むモテット集『カンツィオネス』を出版したのち、次々と作品を出版する。93年エセックス州ストンドン・マッシーに移り、ミサを作曲するなどカトリックとしての立場を作曲活動の面からも明らかにし、ロンドンでの華々しい活躍から身を引き、同地で没した。バードは宗教音楽においては優れた技法と表現力を示し、マドリガルの先駆者として、またバージナル音楽の変奏技巧を発展させるなどの功績によりイギリスにおける「音楽の父」とされている。
[南谷美保]