バージェス(Anthony Burgess)(読み)ばーじぇす(英語表記)Anthony Burgess

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

バージェス(Anthony Burgess)
ばーじぇす
Anthony Burgess
(1917―1993)

イギリスの小説家。本名はJohn Anthony Burgess Wilson。マンチェスターカトリックの家に生まれる。初め音楽家を志すが、同地の大学の英文科を卒業後、軍務に服し、第二次世界大戦後マラヤ(マレー)、ボルネオなどの植民地の教師を歴任。1956年、『マラヤ三部作』の第一部『虎(とら)のための時』で文壇に登場。以来最終長編であるクリストファー・マーロウを主人公にした『デトフォードの死者』(1993)に至る37年間に少なくとも30数編の長編小説、12編の批評、言語学入門書を出している。古語、廃語、卑語に生命力をよみがえらせて、これを馴致(じゅんち)しながら意表をついた設定の作品をつくる彼は、ラブレージョイス正統の後継者であり、しかも現代イギリスでもっとも多産な作家であった。

 代表作に、英語とロシア語からつくった合成語で書いた『時計じかけのオレンジ』(1962)、滑稽(こっけい)で哀れな現代のブルームを主人公にした『エンダビー氏の内側』(1963)、『外なるエンダビー』(1968)、構造主義・文化人類学の枠組みを利用した『MF』(1971)、80歳の死の床に横たわった作家の末期(まつご)の眼(め)を通して見た波瀾(はらん)の現代史を含み込んだ『地上の力』(1980)、三つのテレビの同時進行による終末譚(たん)『世界の終りのニュース』(1982)、死後出版の遺作として韻文体長編小説『バーン』(1995)などがある。93年11月22日没。

[出淵 博]

『『アントニイ・バージェス選集』全九巻(1978~ ・早川書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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