日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
バンダ(Julien Benda)
ばんだ
Julien Benda
(1867―1956)
フランスの思想家。パリ生まれ。ドレフュス事件に際してドレフュス派の論客として登場、最初ペギーの『半月手帖(はんげつてちょう)』誌Cahier de la Quinzaine(カイエ・ド・ラ・キャンゼーヌ)に協力した。しかし純粋な知性主義の立場にたち、それを体現すべき知識人を「聖職者」とよび、生涯にわたってそれを擁護し、その逸脱を批判し続けた。そうした思想は、ベルクソン哲学を「流動の哲学」として論難した『ベルクソニスム』(1912)、文学の古典主義からの偏向を攻撃した『ベルフェゴール』(1919)、知識人の現実問題への容喙(ようかい)を戒めて大きな反響をよんだ『聖職者の背任』La Trahison des clercs(1927)にうかがえるであろう。とはいえ、1930年代からレジスタンス期には彼自身社会参画を行っている。ほかに小説『叙任式』(1911)、評論『ビザンチウム人のフランス』(1945)、自伝三部作『聖職者の青春』(1936)、『世紀の修道士』(1938)、『世捨人の修練』(1946)などがある。
[渡辺一民 2015年6月17日]