バラード(James Graham Ballard)(読み)ばらーど(英語表記)James Graham Ballard

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

バラード(James Graham Ballard)
ばらーど
James Graham Ballard
(1930―2009)

イギリスのSF作家。1960年代におきたニュー・ウェーブ運動の中心となり、前衛的な作品を書いてSFの世界に新しい展望を開いた。したがって彼はタイム・トラベルとかエーリアンといったSFの既成のテーマは取り上げず、その関心はもっぱら近未来の地球に発生する災厄デカダンスに集中している。『沈んだ世界』(1962)は両極の氷が融(と)けて水没していく都市を、『燃える世界』(1964)は大干魃(かんばつ)に襲われる地球を、そして『結晶世界』(1966)では物質宝石のように結晶化していく地球の終末を描き、外宇宙の変化に対応する登場人物たちの内宇宙(意識世界)がとらえられている。その後自伝的小説『太陽帝国』(1984)がベストセラーとなり、後にスピルバーグの監督で映画化もされた。ほかに短編集では『時間都市』『残虐行為展覧会』『バーミリオン・サンズ』など、また『太陽の帝国』の続編ともいえる『女たちのやさしさ』(1991)がある。

厚木 淳]

『峰岸久訳『沈んだ世界』(創元推理文庫)』『中村保男訳『燃える世界』(創元推理文庫)』『中村保男訳『結晶世界』(創元推理文庫)』『法水金太郎訳『残虐行為展覧会』(1980・工作舎)』『浅倉久志訳『ヴァーミリオン・サンズ』(早川文庫)』『高橋和久訳『太陽の帝国』(1987・国書刊行会)』『高橋和久訳『女たちのやさしさ』(1996・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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