バチカン宮殿(読み)バチカンきゅうでん(英語表記)Vaticano

精選版 日本国語大辞典 「バチカン宮殿」の意味・読み・例文・類語

バチカン‐きゅうでん【バチカン宮殿】

バチカンにあるローマ教皇の宮殿。一二世紀の創建で一四世紀末から教皇宮となった。システィナ礼拝堂バチカン美術館バチカン図書館などが含まれる。

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デジタル大辞泉 「バチカン宮殿」の意味・読み・例文・類語

バチカン‐きゅうでん【バチカン宮殿】

Palazzi Vaticaniバチカン市国サンピエトロ大聖堂に隣接する宮殿。5世紀末にローマ教皇シンマクスが建てた居館に起源する。14世紀に教皇グレゴリウス11世が教皇庁を置き、宮殿としての整備を行った。教皇の居館のほか、歴代教皇の収集品を展示するバチカン美術館ミケランジェロ天井画で知られるシスティナ礼拝堂、バチカン図書館などがある。1984年、「バチカン市国」の名称で世界遺産文化遺産)に登録された。

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改訂新版 世界大百科事典 「バチカン宮殿」の意味・わかりやすい解説

バチカン宮殿 (バチカンきゅうでん)
Vaticano

ローマ・カトリック教会の総本山サン・ピエトロ大聖堂に隣接するローマ教皇庁の中心建築。大小20の中庭を介して連なる複雑な建築群から構成され,教皇館Palazzo Pontificio,システィナ礼拝堂,美術館(バチカン美術館),図書館(バチカン図書館)等の重要施設を含む。サン・ピエトロ大聖堂北側にはすでに5世紀末ごろ,ラテラノ宮殿に常住していた教皇のための寓居があった。カール大帝(800)およびオットー1世(962)の戴冠時にはそれが整備されていたと想像されるが,概要が知られるのは12~13世紀に現教皇館の中核が建設されてからである。バチカン宮殿が現在の威容を備えたのは16世紀であり,大聖堂再建と並行してローマ・ルネサンスの壮大様式(グランデ・マニエーラ)を代表する大建築物へと整備・増築が進められた。現在の規模は建築面積5万5000m2(うち中庭部分2万5000m2),礼拝堂と諸室の総計1400に及ぶ。

教皇の居室,執務室,関係諸室から成る。パッパガッリ(オウム)の中庭北側に並ぶ〈火災(インチェンディオ)の間〉〈署名(セニャトゥーラ)の間〉〈エリオドーロの間〉は教皇ユリウス2世がラファエロに描かせた壁画(《アテネの学園》ほか)で名高く,〈ラファエロの間〉とも呼ばれる。東側の聖ダマススの中庭はブラマンテが起工,ラファエロによって完成された。
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百科事典マイペディア 「バチカン宮殿」の意味・わかりやすい解説

バチカン宮殿【バチカンきゅうでん】

バチカンにあるローマ教皇庁の中心建築。ローマ・カトリック教会の総本山サン・ピエトロ大聖堂に隣接する。5世紀末,教皇シンマクスが居館を設けたのに始まる。1377年グレゴリウス11世がここに教皇庁を移し,宮殿を整備。さらにブラマンテミケランジェロなどの増改築によって威容を整えた。宮殿は,ボルジア家の間,ベルベデーレ庭園,システィナ礼拝堂などからなり,部屋数は1000余,中庭20で,構成は複雑。教皇の居所はごく一部で,大部分は美術館,図書館として公開。
→関連項目バチカン美術館ピントゥリッキョラファエロ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バチカン宮殿」の意味・わかりやすい解説

バチカン宮殿
バチカンきゅうでん
Vatican Palace

ローマのバチカン市国にある教皇の宮殿。教皇グレゴリウス9世がアビニョンからローマに帰った 1377年以来,教皇の常住の宮殿となった。 1450年教皇ニコラウス5世によって聖堂の修築が始められ,以後歴代の教皇による拡張が進められた。特に教皇シクスツス4世の頃からの増築および改築にはブラマンテ,ミケランジェロ,ラファエロ,ベルニーニなど,数多くの著名な建築家,美術家が参加した。中庭を含め,面積4万 4000m2。付属礼拝堂や大小の部屋数は 1400。教皇の住居は一部分で,大部分は美術館,図書館などに使用されている。

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世界大百科事典(旧版)内のバチカン宮殿の言及

【システィナ礼拝堂】より

バチカン宮殿内にある礼拝堂。教皇居城の付属礼拝堂として1475年シクストゥス4世によって建立された。…

【バチカン[市国]】より

…市国の行政は教皇庁国務省の管轄下にあり,また外交に関しては教皇庁外務評議会がその担当機関で,国連ではバチカン市国の名の代りに聖座The Holy Seeの名称が使われている。市国内にはサン・ピエトロ大聖堂バチカン宮殿,バチカン市国政庁,庭園などがあり,イタリア警察の管轄のもとに一般に開放されているサン・ピエトロ大聖堂を除くと,国境は市壁によって囲まれ,華麗な服装のスイス衛兵が警備に当たっている。バチカン宮殿は歴代教皇によって増築を重ねられた建物で,そのうち壁画に彩られたシスティナ礼拝堂,教皇館の〈ラファエロの間〉〈ボルジアの間〉などはバチカン美術館の一部をなしている。…

【バチカン美術館】より

バチカン宮殿内の美術コレクションの総称。バチカン図書館を含めていうこともある。…

【ラファエロ】より

…この時期の代表的作品として,《聖母の埋葬》(ボルゲーゼ美術館),《アニョロおよびマッダレーナ・ドーニの肖像》(ピッティ美術館)のほか,《大公の聖母》(ピッティ美術館),《ひわの聖母》(ウフィツィ美術館),《牧場の聖母》(ウィーン美術史美術館),《美しき女庭師》(ルーブル美術館)など,多くの聖母子像が挙げられる。08年,教皇ユリウス2世に招かれてローマに赴き,ユリウス2世,レオ10世の下でバチカン宮殿の〈署名(セニャトゥーラ)の間〉(1508‐11),〈エリオドーロの間〉(1511‐14),〈ボルゴの火災(インチェンディオ)の間〉(1514‐17),〈ロッジア〉(1517‐19)などの装飾活動に従事した。とくに,〈署名の間〉の壁画《アテネの学園》《聖体の論議》は,変化に富んだ人物表現と完璧な全体構成によって,ルネサンス期の最高の傑作に数えられる。…

※「バチカン宮殿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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