バイオレット(英語表記)sweet violet
English violet
Viola odorata L.

精選版 日本国語大辞典 「バイオレット」の意味・読み・例文・類語

バイオレット

〘名〙 (violet)
① 植物名。菫(すみれ)
金色夜叉(1897‐98)〈尾崎紅葉〉前「其の鼻までも菫花(ヴァイオレット)多く齅ぐべからざる異香に薫ぜらるるの幸を受くべきなり」
すみれ色。紫色。
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉春「ヴァイオレットインキと、筆筒と、香水の罎を水入に為たのと」
リキュールの一つ。すみれ色をした甘い酒で、カクテル用。
④ 紫色の合成宝石。二月の誕生石とする。

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デジタル大辞泉 「バイオレット」の意味・読み・例文・類語

バイオレット(violet)

スミレ。特に、ニオイスミレのこと。
すみれ色。濃紫色。
リキュールの一。紫色の甘口の酒。カクテルに用いる。
[補説]作品名別項。→バイオレット

バイオレット[絵画]

東郷青児による油絵。昭和27年(1952)の作品。微笑む女性の上半身像。損保ジャパン日本興亜美術館蔵。

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改訂新版 世界大百科事典 「バイオレット」の意味・わかりやすい解説

バイオレット
sweet violet
English violet
Viola odorata L.

ヨーロッパおよび北アフリカの地中海沿岸地方原産のスミレ科多年草和名ニオイスミレ。花によい香りがあるため,古くからヨーロッパでは,香りの花として親しまれており,種小名odorataも〈香りのある〉という意味である。基部にワサビ状の根茎をもち,その先より葉柄のある心臓形または腎臓形の,葉縁に鈍鋸歯のある葉を根生するが,この葉姿もワサビに似ている。古株になると基部は木質化することがある。草丈は10~15cmぐらい。早春,まだかなり寒さが残るころから径2~3cmぐらいの甘く上品な香りをもつすみれ色の花を,次々と1ヵ月以上にわたって咲かせる。スミレ類独特の距は,まっすぐで短い。北イタリアと南フランスでは香水原料として変種var.parmaが栽培されている。1tの花から約400gの精油が抽出される。葉はお茶のように使われ,咳止めになるという。また花を砂糖漬にしたり,料理の飾りに使うことがあるという。園芸的には,香りを楽しむ花として古くより栽培されていたため,かなり多くの品種がある。ザ・ツァーThe Czarはもっとも有名な品種で,美しい青紫色花を咲かせ,プリンセス・オブ・ウェールズPrincess of Walesは香りの強い品種として知られ,またラ・フランスLa Franceは早咲種として人気がある。新しい品種ではやや濃い桃色花のスイーティーSweetie,すみれ色大輪で香りのよいラブソングLovesongなどがあり,このほか,白花種や珍しい八重咲品種もある。庭植えで楽しむほか,ロックガーデンの植材にもよく,また鉢植えにもされる。一方,ハート型の葉を添えて切花にしたものを花束にし,愛の花束として若い人たちに好まれる。じょうぶな宿根草であるが,比較的夏は冷涼で,冬は温暖な気候を好み,また日当りのよい所でよく生育開花する。したがって,冬季,南向きの日だまりになるような場所へ植えると,早咲種では冬の間より開花する。定植期は9月下旬~10月上旬。繁殖は5月ごろ株分けをするか,葉を4~5葉つけて根茎を切り挿木をしても殖やせる。
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色名がわかる辞典 「バイオレット」の解説

バイオレット【violet】

色名の一つ。ヴァイオレットとも表記する。JISの色彩規格では「あざやかな青紫」としている。バイオレットはスミレのことで、スミレ科スミレ属植物の総称。一般に、スミレの花のように少しみがかった色をさす。スミレには黄色などの花もあるが、とくに紫系統をさしていう。和名はすみれ。少しみがかった紫色をパープルといい、どちらも日本で馴染みのある色名。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイオレット」の意味・わかりやすい解説

バイオレット
ばいおれっと
sweet violet
[学] Viola odorata L.

スミレ科(APG分類:スミレ科)の多年草。ニオイスミレともいう。高さ10~15センチメートル。葉は根際(ねぎわ)から生え、心臓形で鋸歯(きょし)があり、葉柄は長い。株元から1本ずつ花茎を出し、芳香の強い紫色花を開く。園芸種には桃、白、淡青色花もあり、八重咲き種もある。暖地では11月から咲き始め3月が最盛期になる。ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア原産で、観賞用として花壇や鉢に植えるほか、切り花とする。香水の材料としても有名である。繁殖は、花期後に分枝した匍匐(ほふく)枝を株分けして、日当りのよい暖所に植える。夏季の乾燥と強光線に弱く、ハダニによる被害も多いので、注意が必要である。

[神田敬二 2020年7月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バイオレット」の意味・わかりやすい解説

バイオレット
violet leaves absolute

南フランスのグラース周辺で栽培されるニオイスミレ Viola odorataの葉から溶剤抽出法により得られる固溶体で,強いグリーンノート (緑の香り) をもつ有用な天然香料。補香剤としてすみれ香調の香料などに調合され,香粧品,石鹸などの香料に用いられるほか,特殊なフレグランス製品に利用される。なお近年,天然香料のすみれ花香は価格や人気の点から姿を消し,そのほとんどが合成香料 (すみれ香調) になっている。

バイオレット
violet

スミレ属 Viola全体をさす英名であるが,特に観賞用に栽培されるニオイスミレ (匂菫)をさすことが多い。園芸品種が多く,香水原料としても特に南ヨーロッパで栽培されている。 (→スミレ〈菫〉 )

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デジタル大辞泉プラス 「バイオレット」の解説

バイオレット〔タバコ〕

JTが製造、販売するタバコのブランド、また、その商品名。1972年5月、販売開始。タール17mg、ニコチン1.2mg、20本入り。沖縄県限定販売。

バイオレット〔自動車〕

日産自動車が1973年から1982年まで製造、販売していた乗用車。4ドアセダンを中心とする。オースターとスタンザの姉妹車。

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百科事典マイペディア 「バイオレット」の意味・わかりやすい解説

バイオレット

ニオイスミレ

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栄養・生化学辞典 「バイオレット」の解説

バイオレット

 紫色のリキュール.スミレの香りをもつ.

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世界大百科事典(旧版)内のバイオレットの言及

【スミレ】より

… スミレ属の種はかわいらしく,多くが山草的に栽植される。またニオイスミレV.odorata L.(英名sweet violet,この園芸品種がバイオレットとよばれる)はヨーロッパから西アジア原産であるが,芳香のある濃紫色の花は観賞のため庭園や花壇に植えられ,ときには野生化している。花からは香水がつくられる。…

【スミレ】より

…【谷口 幸男】。。…

【スミレ】より

… スミレ属の種はかわいらしく,多くが山草的に栽植される。またニオイスミレV.odorata L.(英名sweet violet,この園芸品種がバイオレットとよばれる)はヨーロッパから西アジア原産であるが,芳香のある濃紫色の花は観賞のため庭園や花壇に植えられ,ときには野生化している。花からは香水がつくられる。…

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