ハーレム・ルネサンス(読み)はーれむるねさんす(英語表記)Harlem Renaissance

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハーレム・ルネサンス」の意味・わかりやすい解説

ハーレム・ルネサンス
はーれむるねさんす
Harlem Renaissance

1920年代にアメリカ、ニューヨークの黒人地区ハーレムから広がった民族的覚醒(かくせい)と黒人芸術・文化の興隆をさす。ニグロ・ルネサンスともいう。全出演者が黒人のミュージカル『シャッフル・アロング』(1921)で開幕し、舞台劇『緑の牧場』(1930)の上演で閉幕したとされるが、近年この期を第一期、60年代までを第二期として50年間をひっくるめて扱う史家(J・H・フランクリン)もある。ジャズ・エイジの出現やP・ロブスンら黒人歌手、俳優の舞台への進出だけでなく、詩、小説、劇作、芸術、学問分野にも黒人の台頭が目覚ましく、文芸復興現象を呈した。L・ヒューズはこの期に登場して、その後あらゆるジャンルにわたりもっとも長く創作活動を続けた作家であった。アレン・ロックの評論『ザ・ニュー・ニグロ』(1925)は、この時期に形成された時代精神に息吹く「新しい黒人」像を規定し、「ニュー・ニグロ」は、この期を画する黒人群像をいう象徴的なことばとなった。

[古川博巳]

『古川博巳著『ニグロ・ルネッサンスの社会と文学』(『黒人文学入門』所収・1973・創元社)』『J・H・フランクリン著、木内信敬訳『ハーレム・ルネッサンス』(『アメリカ黒人の歴史――奴隷から自由へ』所収・1978・研究社出版)』『アレン・ロック著、浜本武雄訳『新しいニグロ』(『黒人文学全集第11巻 ニグロ・エッセイ集』所収・1962・早川書房)』『アラン・ロック編、小山起功訳『新しい黒人』(『アメリカ古典文庫19 黒人論集』所収・1975・研究社出版)』

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世界大百科事典(旧版)内のハーレム・ルネサンスの言及

【黒人文学】より


[アメリカ合衆国の場合]
 アメリカ黒人の文学の発祥は18世紀半ばの少数の詩作品にまでさかのぼるが,最初の小説はブラウンWilliam Wells Brownの《クローテル――大統領の娘》(1853)である。20世紀に入って職業作家の出現が少数ながら見られたが,1920年代にはニューヨークのハーレムを中心に,〈ニグロ・ルネサンス(ハーレム・ルネサンス)〉と呼ばれる活発な文芸活動が始まり,この勢いは第2次大戦後の状態の基礎になった。この時期には,J.L.ヒューズ,カレンCountee Cullen,マッケーClaude McKay,トゥーマーJean Toomerら有能な小説家や詩人が輩出した。…

【黒人問題】より

…この傾向はその後も継続し,第2次大戦後には黒人人口のうち南部に住む者は約50%となった。一方,この移動のため北部各都市にはブラック・ゲットーと呼ばれる黒人のスラム街ができ上がるが,そのなかでもニューヨークのハーレムは1920年代に黒人文化の中心地となり,ハーレム・ルネサンスと呼ばれる時代を現出した。(5)黒人革命時代 第2次大戦に多数の黒人が参加してから,黒人大衆の自覚が非常に高まった。…

【ハーレム】より

…第1次大戦が終わったときには中心のレノックス街が黒人で埋まるほどになっていた。さらに1920年代を迎えたハーレムでは,音楽や文学などの分野でデューク・エリントンやJ.L.ヒューズらの黒人たちの才能が爆発的に開花し,〈ハーレム・ルネサンス〉とよばれる時代が現出した。ブラック・ナショナリズムの歴史の上に大きな足跡を残したM.ガービーもまた,この時代のハーレムを舞台に活躍し,ハーレムはまさに黒人文化のメッカとなった。…

※「ハーレム・ルネサンス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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