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ドイツの哲学者,プロテスタント思想家。〈北方の賢者〉とも呼ばれ,啓蒙的合理主義がなお強い影響力をもつ時代のただ中にあって,それに対する徹底した批判を展開し,後のロマン主義や実存主義に連なる道を開いた。ケーニヒスベルクに生まれ,もとは商用で渡ったロンドンに滞在中決定的な回心を体験する。生地にもどって著作活動にたずさわるかたわら,カントの斡旋で下級税務官吏の職につく。カントの理性批判の哲学にたいしては,普遍的概念に定位する理性の純粋主義を鋭く批判し,理性よりは具体的啓示の言葉に対する信仰による聴従の必要を説いた。詩は人類の母語であるとして,あくまでも生きた具体的言葉を尊重し,また自然をも含めた世界を徹底してできごとと歴史の相において見る行き方は,ヘルダー,F.H.ヤコビらに決定的影響を与え,ゲーテやヘーゲルも彼を重んじた。ビーコと並んで今日再評価の機運の強い思想家である。
執筆者:坂部 恵
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