ハースト(英語表記)William Randolph Hearst

デジタル大辞泉 「ハースト」の意味・読み・例文・類語

ハースト(William Randolph Hearst)

[1863~1951]米国の新聞経営者。ニューヨークピュリッツァーの「ワールド」と販売合戦を行い、イエロージャーナリズム全盛期をもたらした。全米各地の新聞および雑誌、放送局通信社などを経営。

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精選版 日本国語大辞典 「ハースト」の意味・読み・例文・類語

ハースト

(William Randolph Hearst ウィリアム=ランドルフ━) アメリカの新聞経営者。「ニューヨークジャーナル」を初めとし、情報産業の各分野に進出し、ニュース本位で大衆向きの娯楽紙を開発。新聞王と呼ばれた。(一八六三‐一九五一

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改訂新版 世界大百科事典 「ハースト」の意味・わかりやすい解説

ハースト
William Randolph Hearst
生没年:1863-1951

アメリカの新聞経営者。1863年サンフランシスコに生まれる。82年ハーバード大学に入り,学生雑誌《ハーバード・ランプーンHarvard Lampoon》(《ナショナル・ランプーン》の前身)のビジネス・マネージャーとして活躍したが85年退学。87年父が買い取っていた《サンフランシスコ・エグザミナーSan Francisco Examiner》紙の経営・編集にあたり大成功を収め,95年750万ドルの資金をもってニューヨークに進出,《ニューヨーク・ジャーナルNew York Journal》を買収した。ピュリッツァーの開拓した新聞手法をまね,かつそれを肥大化させ,また高給でスタッフを引き抜くなどして,イェロー・ジャーナリズムなどと攻撃されながらピュリッツァーと激烈な競争を展開し,現代大衆紙の原型をつくり上げた。1900年,シカゴ夕刊紙アメリカンAmerican》,04年にはボストンで夕刊紙《アメリカン》を出し,初めて新聞の系列化を実現した。

 一方,政治にも野心を抱き,反トラストを掲げて1902年下院議員となり,04年の民主党大会で大統領候補に指名されるよう運動するが失敗,続いてニューヨーク市長,知事選にも立候補するが落選した。22年前後より政界での成功を断念,サンフランシスコ,サンシメオン中世の城のような邸宅をつくったり,海外旅行で美術品を買いあさるなど浪費を重ねた。傘下の企業は33年前後に最大に達し,日刊紙26,日曜紙17,雑誌13,通信社(INS)1,ラジオ放送局8,映画会社2社を支配した。〈ハースト王国〉はその後衰退したものの,彼の死亡した51年現在で全日刊紙発行部数の9.8%(18紙)を傘下に収めていた。オーソン・ウェルズの監督・主演による映画《市民ケーン》のモデルでもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハースト」の意味・わかりやすい解説

ハースト
Hearst, William Randolph

[生]1863.4.29. カリフォルニア,サンフランシスコ
[没]1951.8.14. カリフォルニア,ビバリーヒルズ
アメリカ合衆国の新聞経営者。ジョージ・ハーストの子。1887年父が所有する『サンフランシスコ・エグザミナー』紙を受け継ぎ,1895年ニューヨークに進出。『ニューヨーク・モーニング・ジャーナル』を買収して『ニューヨーク・ジャーナル』と改題したのを手始めに,独特の経営手法で 20世紀にかけて,新聞 30,雑誌十数種,通信,映画など,関連事業 70種を擁する巨大な「ハースト・チェーン」を築いた。19世紀末ジョーゼフ・ピュリッツァーとの間に激烈な競争を展開し,センセーショナルな報道で,いわゆるイエロー・ジャーナリズムの中心人物となった。政治的にはアメリカ=スペイン戦争や反トラスト運動の扇動,8時間労働制女性参政権の主張,ニューディール政策に対する賛美から非難への急変など,めまぐるしく変転したが,共産主義に対しては一貫して反対の立場をとった。

ハースト
Hearst, George

[生]1820.9.3. モンタナ,サリバン近郊
[没]1891.2.28. ワシントンD.C.
アメリカの鉱山主,農場経営者,新聞経営者,政治家。 W.ハーストの父。 1850年カリフォルニアに移り,ユタ,モンタナ,サウスダコタ,メキシコに鉱山を所有。 80年サンフランシスコで『デイリー・エグザミナー』紙を創刊。 86~91年連邦上院議員。

ハースト
Hearst, Phoebe

[生]1842.12.3. ミズーリ
[没]1919.4.13.
アメリカの鉱山主 G.ハーストの妻。旧姓 Apperson。慈善事業家として有名。カリフォルニア州と首都ワシントン D.C.で教育慈善事業を営んだ。

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百科事典マイペディア 「ハースト」の意味・わかりやすい解説

ハースト

米国の新聞経営者。父の跡を継いで《サンフランシスコ・エグザミナー》を経営,1895年ニューヨークに進出,ピュリッツァーの《ニューヨーク・ワールド》と激烈な販売競争をしてイエロー・ジャーナリズムの全盛期を現出。1930年代には,日刊紙26,ラジオ放送局8など新聞・雑誌・放送等のマス・メディア各分野を包含するハースト・チェーンをうちたて,支配した。オーソン・ウェルズの監督・主演による映画《市民ケーン》のモデル。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ハースト」の解説

ハースト
William Randolph Hearst

1863~1951

アメリカの新聞経営者。1890年代に『ニューヨーク・モーニング・ジャーナル』紙の経営に乗り出し,アメリカ‐スペイン戦争では主戦論を展開,大衆向けの刺激的な報道で発行部数を拡大した。その後も他紙を吸収しハースト・チェーンを築く。

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世界大百科事典(旧版)内のハーストの言及

【アメリカ合衆国】より

…1833年デイBenjamin Dayの出した1ペニー新聞《ニューヨーク・サン》がそれであるが,現代型新聞の原型は,19世紀末から20世紀にかけて形成されたといえよう。すなわち,米西戦争(1898)をはさむ期間,J.ピュリッツァーの《ワールド》(1883年から所有)とW.R.ハーストの《ニューヨーク・ジャーナル》(1895年から所有)との,激烈な競争(イェロー・ジャーナリズム)のなかで,100万単位の部数,広告収入の確保,巨大資本による群小紙・誌の系列化,センセーショナリズムなど,現代新聞の特徴が生み出される。繁栄の1920年代には巨大企業による新聞チェーンの形成と系列化が進み,さらに30年代には,多くの新聞がF.D.ローズベルトのニューディール政策に反対して,党派的に〈偏向〉した報道を行った。…

【イェロー・ジャーナリズム】より

…日本で赤新聞といわれるのがほぼ同義。1890年代,巨大企業と化したピュリッツァーの《ワールド》紙と,ハーストの《ニューヨーク・ジャーナル》紙は,常軌を逸した競争を展開する。《ワールド》の日曜版は,8ページの漫画セクションを出し,そのうちの4ページをカラーで印刷していた。…

【市民ケーン】より

…新人監督としては異例の6本契約を結び,製作に関するすべての権限と自由を保証されてつくったことでも伝説的な映画である。ウェルズは当初,映画化の題材として,J.コンラッドの小説《闇の奥》,イギリスの詩人C.D.ルイスがニコラス・ブレークの名で書いたスパイ・スリラー小説などを考えていたが,結局,脚本家H.J.マンキーウィッツ(1897‐1953)が《ニューヨーク・タイムズ》の記者時代からもっていたアイデアであるという〈新聞王〉W.R.ハースト(1863‐1951)をモデルにした《市民ケーン》に決まった。新聞界の大立者として権力と財力をわがものにしたチャールズ・フォスター・ケーンという男が,〈バラのつぼみ〉という謎めいたことばを残して孤独のうちに死んだところから始まり,それを伝えたニュース映画の記者が〈バラのつぼみ〉の意味をもとめてケーンの生涯を追い,かかわりのあった人物の回想を通してケーンの人物像と生涯の意味が浮かびあがってくる構成。…

【ニューヨーク・ジャーナル】より

…1882年J.ピュリッツァーの弟アルバートAlbert P.(1851‐1909)がニューヨークで1セント紙《モーニング・ジャーナルThe Morning Journal》として創刊,87年20万台に伸びるが,2セントに値上げして失敗。95年W.R.ハーストが18万ドルで買収,《ニューヨーク・ジャーナル》と改題した。ハーストは膨大な資金をつぎ込み,ピュリッツァーの《ワールド》を模倣し同紙を短期間のうちにピュリッツアーを脅かす強大な大衆紙に成長させた。…

【ピュリッツァー】より

…移民として多くの辛酸をなめた彼は素朴にデモクラシーの理念を信じ,社会正義の実現を願っていた。しかし,W.R.ハーストとの競争は,センセーショナリズムを助長し,あらゆるものをニュース化するとともに,広告費で支えられる巨大な新聞産業をつくり上げた。90年に引退を声明,特別製のヨットで療養生活を続けたが,死ぬまで編集スタッフへの方針指示はやめなかった。…

※「ハースト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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