ハルス(Russell A. Hulse)(読み)はるす(英語表記)Russell A. Hulse

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ハルス(Russell A. Hulse)
はるす
Russell A. Hulse
(1950― )

アメリカの天文学者物理学者ニューヨーク生まれ。ブロンクス科学高校時代に望遠鏡づくりに興味を覚え、古いテレビの部品などを使って電波望遠鏡を両親の別荘で自作したが失敗する。物理学、天文学、電子機器の開発のなかから、大学では物理学を専攻することに決め、クーパーユニオン大学を1970年に卒業。マサチューセッツ大学では大学院生としてJ・テーラーの指導を受け、1975年に博士号を取得した。

 大学院生時代である1974年に、テーラーとともに「連星パルサー」という新しい天体を発見した。周期的に電波をだす中性子星であるパルサーが、中性子星を相方として互いの周りを回っているのが連星パルサーである。パルサー自体はすでに発見されていたが、それが連星をなしていることが新発見であった。この発見についての論文は1978年に発表され、連星パルサーが徐々にエネルギーを失う過程を詳細に観測することで、アインシュタインの一般相対性理論で予言されている「重力波」の存在が間接的に確認された。新種のパルサーの発見により、天文学だけでなく、重力研究にも新しい領域を開拓したことが高く評価され、1993年にテーラーと共同ノーベル物理学賞を受賞した。

[馬場錬成]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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