ハナムグリ(読み)はなむぐり

改訂新版 世界大百科事典 「ハナムグリ」の意味・わかりやすい解説

ハナムグリ (花潜)
Cetonia pilifera

甲虫目コガネムシ科の昆虫。体は全体に褐色の短毛を生じ,光沢のない緑色で白い斑紋がある。体長15mm内外。北海道から九州まで分布し,成虫は4月ころから出現する。各種の花に飛来し,その名のように花に頭を潜り込ませてみつをなめ,体に多くの花粉を付着させる。雌は腐葉土やよく腐った朽木の中に産卵。幼虫はそれらを食べて成育し,翌年の春ごろ蛹化(ようか)する。

 ハナムグリ亜科Cetoniinaeに属する種類を総称してハナムグリということもある。ハナムグリ類は英名ではflower beetle,rose beetleなどと呼ばれる。世界から約2500種が記録されているが,アフリカ,アジアの熱帯地方に種類が多い。アフリカ産のゴライアスオオツノハナムグリGoliathus goliathusには体長が100mmを超す個体もあって世界最大。ハナムグリ亜科の成虫は日中活動し,色彩の美しいものが多い。また熱帯産の種には頭に角をもつものが少なくない。樹液,熟した果実,花のみつを吸う。また飛翔(ひしよう)には前翅はほとんど開かず,前翅の下から左右にのばした後翅をはばたく。幼虫は主として腐植物を食し,他のコガネムシ類幼虫に比して頭部胸脚が小さく,胴部が顕著に太い。コアオハナムグリOxycetonia jucundaは体長11~16mm。花壇の花などに多く見られる。カナブンRhomborrhina japonicaは体長25mm内外。クヌギ類の樹液にもっともふつうに見られる。そのほか,クロカナブンシロテンハナムグリシラホシハナムグリなどが知られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナムグリ」の意味・わかりやすい解説

ハナムグリ
はなむぐり / 花潜
[学] Eucetonia pilifera

昆虫綱甲虫目コガネムシ科ハナムグリ亜科の昆虫。日本各地に分布する。体長16ミリメートル内外。体は長方形で、背面は光沢がなく濃緑色で、白い小紋が上ばねの後方などにあり、淡褐色の長い毛が生えている。腹面は銅色で強い光沢があり淡褐色の毛が生え、脚(あし)も銅色。春から夏にかけて現れ、おもに山地のセリやキク類などの花に飛んでくる。幼虫は木くずや朽ち木などの中にすむジムシで、背中を下にして移動する。近似種のアオハナムグリE. roelofsiは背面に長い毛がなく、花に飛来する。

 ハナムグリ亜科Cetoniinaeは、多くは熱帯・亜熱帯域に産するが寒地にまで分布しており、およそ2500種ぐらいが知られ、美しい色模様をもつものや金属色の種類が多く含まれ、頭に角(つの)状の突起をもつものもある。カナブンやハナムグリの類はこの亜科に属し、中部アフリカ産の巨大なゴライアスオオツノコガネの類もここに含まれる。

[中根猛彦]


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百科事典マイペディア 「ハナムグリ」の意味・わかりやすい解説

ハナムグリ

コガネムシ科の甲虫の1種。日本特産で全土に分布。体長15mm内外,光沢のない緑色,白斑があり,全体に毛がある。成虫は4〜6月に発生,花にくる。幼虫は腐植土を食べる。ハナムグリ亜科ほかのものをハナムグリと総称することもあり,いずれも体はやや扁平。体長5〜120mm。美しい種類が多く全世界に約2500種ある。日本にはカナブン,クロハナムグリなど40種以上。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナムグリ」の意味・わかりやすい解説

ハナムグリ
Cetonia pilifera

鞘翅目コガネムシ科。体長 15~20mm。体はやや扁平,頭部はほぼ長方形,前胸はほぼ三角形である。背面は緑色地に褐色長毛がまばらに生える。腹面は赤銅色で光沢が強く,褐色長毛が密生する。上翅側縁が基部近くで湾入し,後翅をその間から伸ばして飛翔するのが特徴的である。成虫は4~8月頃みられ,花上に集る。北海道,本州,シベリア,ヨーロッパに分布する。

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「ハナムグリ」の解説

ハナムグリ
学名:Cetonia pilifera

種名 / ハナムグリ
目名科名 / コウチュウ目|コガネムシ科
解説 / 花に集まります。
体の大きさ / 14~20mm
分布 / 北海道~九州
成虫出現期 / 4~7月
幼虫の食べ物 / くち木や腐植土

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