ハッチョウトンボ(英語表記)Nannophya pygmaea

改訂新版 世界大百科事典 「ハッチョウトンボ」の意味・わかりやすい解説

ハッチョウトンボ
Nannophya pygmaea

トンボ目トンボ科の昆虫体長約15mm,後翅長約13mmで,不均翅亜目のトンボとしては世界最小のものに入る。雄は成熟すると全体に紅赤色となるが,雌は褐色黄色条の斑紋を呈する。ともに翅の基半は橙赤色。日本列島では青森県から鹿児島県まで全国の大部分から記録されているが,南西諸島には分布しない。幼虫は浅いミズゴケ湿原の中に定着して例年発生し,羽化成虫もそこを離れない。しかし,近年はこのような湿原の破壊が著しいので非常に減少した。平地では5~6月,山地では7~8月に出現する。国外では中国,東南アジア各地,ニューギニアまで点々と知られる。南方のものはかなり小型で黒紋が退化する傾向がある。ハッチョウとは尾張八丁畷(はつちようなわて)に多産したところから起こったもので,明治以前からの名称である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハッチョウトンボ」の意味・わかりやすい解説

ハッチョウトンボ
はっちょうとんぼ / 八丁蜻蛉
[学] Nannophya pygmaea

昆虫綱トンボ目トンボ科の昆虫。体長約15ミリメートル、後翅(こうし)長約13ミリメートルで、不均翅亜目のトンボとしては世界最小のものに入る。雄は成熟によって全体紅色となるが、雌は黄色と褐色の斑紋(はんもん)を示す。ともにはねの基半部は橙赤(とうせき)色、日本列島では青森県から鹿児島県まで全土に点々と分布するが、幼虫の育つ、浸出水による浅いミズゴケ湿原が破壊されることによって著しく減少した。平地では5~6月、山地では7~8月にみられる。さらに本種の分布は、中国大陸を含み、東南アジア各地から広く記録され、ニューギニア島に至る。一般にこれら南方産のものは小形で黒斑が退化する傾向がみられる。

朝比奈正二郎


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハッチョウトンボ」の意味・わかりやすい解説

ハッチョウトンボ
Nannophya pygmaea

トンボ目トンボ科。体長約 15mm,後翅長 14mm内外で,トンボ亜目 (前後翅が異形の大型のトンボで,サナエトンボ科,ヤンマ科,トンボ科などを含む) のなかで世界最小種。雄の体は初め橙黄色であるが,成熟すると鮮かな赤色に変る。雌の体色は雄と異なり黄色で,黒色と褐色の斑紋がある。翅は透明で基部は広く橙色を帯びる。平地で5~6月,山地で7~8月にみられ,ミズゴケ湿地にのみ発生する。本州,四国,九州,台湾,中国,東南アジアに分布する。 (→トンボ類 )

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百科事典マイペディア 「ハッチョウトンボ」の意味・わかりやすい解説

ハッチョウトンボ

トンボ目トンボ科の昆虫。日本産トンボ科中の最小種で,体長18mm内外。アジア東・南部に広く分布し,日本では本州以南にすむが,局所的。雄はだいだい色,老熟すると赤くなる。雌は黒色で褐色や黄色の斑紋がある。成虫は6〜7月に出現,湿原の沼沢地に多い。名古屋の八丁畷(なわて)に多産したのでこの名がある。

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世界大百科事典(旧版)内のハッチョウトンボの言及

【作手[村]】より

…1960年代後半から紡績,自動車部品などの工場が進出しているが,人口は1955年以降減少傾向にある。中央部に長ノ山湿原があり,日本最小のハッチョウトンボが生息し,愛知高原国定公園に指定されている。鴨ヶ谷地区の甘泉寺境内にあるコウヤマキは天然記念物。…

※「ハッチョウトンボ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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