ハクセキレイ(英語表記)Motacilla alba; white wagtail

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハクセキレイ」の意味・わかりやすい解説

ハクセキレイ
Motacilla alba; white wagtail

スズメ目セキレイ科。黒白模様のセキレイの仲間。本種はユーラシア大陸のほぼ全土分布し,9亜種がある。全長 16.5~21cm。基亜種はタイリクハクセキレイ M. a. alba で,ハクセキレイは本種名でもあり,日本にすむ 1亜種 M. a. lugens 名でもある。この亜種の雄の夏羽(→羽衣)は後頭につながる過眼線,胸,後頭から背面にかけての部分は黒い。顔と喉,腹は白い。背,肩は灰色を帯び,は白く,先端部が黒い。尾羽は両端白色のほかは黒色。冬羽は夏羽の黒い部分が灰色や淡い色になる。過眼線がなく,セグロセキレイとよく似たものもいる。日本では 7亜種が記録されている。そのうちハクセキレイは北海道本州では留鳥九州地方以南では冬鳥(→渡り鳥)として生息する。また,ホオジロハクセキレイ M. m. leucopsis が九州の一部で繁殖し,越冬しているが,ほかの亜種は迷鳥である。冬季には全国の海岸や河口できわめて普通に見られる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ハクセキレイ」の意味・わかりやすい解説

ハクセキレイ (白鶺鴒)
white wagtail
pied wagtail
Motacilla alba

スズメ目セキレイ科の鳥。全長約20cm。背面が灰色または黒色,胸も黒いが,顔や腹は白く,全体に白っぽいセキレイである。ユーラシア大陸に広く分布し,高緯度地方で繁殖するものは冬に南方へ渡る。雄の頭部と背面の白黒紋様は非常に変異に富み,ユーラシア大陸中部の灰背型とイギリス,東アジアの黒背型の2グループに大別され,さらに数多くの亜種に分類される。亜種の進化は氷期に個体群が隔離された結果起こったと解釈されている。日本では3亜種が知られる。ハクセキレイM.a.lugensは東北日本の海岸地方で繁殖し,近年海岸沿いに南へ分布を広げている。ホオジロハクセキレイM.a.leucopsisは西南日本の低地で繁殖することが近年確認されたが,分布を北東に広げている。この2亜種が分布を広げている要因については,まだよくわかっていない。もう1亜種のタイワンハクセキレイM.a.ocularisは日本では繁殖しない。いずれも海岸や河口,河川下流域,低地の水辺にすみ,地上のへこみや石・建造物の隙間に巣をつくって,1腹4~6個の卵を産む。非繁殖期には昼間分散採食し,夜は大きな集団でねぐらにつく。
セキレイ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハクセキレイ」の意味・わかりやすい解説

ハクセキレイ
はくせきれい / 白鶺鴒
white wagtail
[学] Motacilla alba

鳥綱スズメ目セキレイ科の鳥。同科セキレイ属10種中の1種。全長約21センチメートル。セグロセキレイM. grandisに似るが顔面は白色で、亜種のハクセキレイとタイワンハクセキレイのみ黒色の過眼線が明瞭(めいりょう)である。ハクセキレイは石川県以北で繁殖するが、別亜種ホオジロハクセキレイの繁殖が近年、九州北部、山陰で記録されている。上面が灰色の個体を古名ではウスズミセキレイ(薄墨鶺鴒)とよんだ。

[坂根 干]


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百科事典マイペディア 「ハクセキレイ」の意味・わかりやすい解説

ハクセキレイ

セキレイ科の鳥。翼長9.5cm。黒と白の体色をした日本では最もふつうのセキレイ類。ユーラシアからアフリカにかけて広く分布。低地の水辺にすみ,市街地にも多い。川原の石の間や人家などに巣を作り,水辺の昆虫を食べる。チチッ,チチッと鳴きながら飛ぶ。冬には都市街路樹や看板などに多数集まってねぐらをとることがある。
→関連項目セキレイ(鶺鴒)

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世界大百科事典(旧版)内のハクセキレイの言及

【セキレイ(鶺鴒)】より

…【長谷川 博】。。…

【セキレイ(鶺鴒)】より

… セキレイ類の分布域は旧世界で,主として旧北区を中心に生息している。しかし,近年ハクセキレイとツメナガセキレイは新大陸にも分布を広げ,アラスカの一部でも繁殖している。日本では,キセキレイハクセキレイセグロセキレイ,ツメナガセキレイ,イワミセキレイの5種が繁殖し,キガシラセキレイがまれに渡来する。…

※「ハクセキレイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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